謝国忠
最近、中国は日本国債を買い越している。日本政府は中国政府に対し、対ドルの円高が急速に進んだのは、それがひとつの原因であると話している。しかし、中国が日本国債に投資した額は微々たるものだ。それにも関わらず、日本政府は真に大金を手にして、日本円に投資するチャンスを今か今かと狙っている資産家たちに対しては、見て見ぬ振りをして、何の策も講じていないのだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、追加の金融緩和を実施する予定だと述べた。ギリシアの抱える債務はまさに時限爆弾のように、投資者たちをユーロから遠ざけている。日本人もまた、触らぬ神に祟りなしとでも言うように手を出さない。その為市場は、ビンタをしてももう一方の頬を差し出すような、従順で無抵抗な日本政府と日本中央銀行に目をつけたのである。
アラン・グリーンスパン時代のFRBは、金融市場に巨大な流動性を与えたことで有名だ。これにより、アメリカでは他の事は何もせず、一日中パソコンの前に張り付いて株を売買する人々が大量に現れた。今の世界経済の行く先は暗いままである。利率はゼロに近い為、投資者はリスクを負った取引はおろか、信用取引を利用した裁定取引にさえも手を出さないでいる。なんとしてでも資金の投資先を探したかった人々は皆、日本円の高騰を望んでいた。そして、大量の資金を日本円に賭けてみた結果、円高は本当に実現したのだ。
1995年に1ドル80円台までドルが落ち込んだ事があった。多くの専門家が60円台なることもあり得ると予想していた。しかし、日本円は下降相場に突入し円高から一転、急激な円安に陥ったのである。1998年には1ドル140円台にまでなった急な円安は、下がるところまで下がってから、ようやく戻り始めたのである。現在の円高はこの時の再演ではないだろうか。増える投資は日本の円高を助長し、1995年を上回る勢いになるとも予想されている。日本経済は過剰な円高を望んでいる訳ではない。FRBが追加の金融緩和を実施しなければ、日本円は1ドル100円台辺りに止まっていたかも知れず、実施しても90円台が合理的な値である。市場では円高が60か50円台までいくだろうなどと言っているが、これはただ投資者を誑かしているだけである。
今日の日本経済は1995年の時とは様子が違う。当時、日本の電子と自動車産業は世界市場に君臨していた。しかし、インターネットが普及するにつれ、日本の電子企業の栄光も今は亡きものとなり、自動車企業の挫折も重症である。日本は長年、世界に誇れるような新しい商品を世に送り出していない。また、全体的に見れば、日本の労働供給量は下がる一方で、日本経済の先行きは暗い。加えて、日本政府の債務は1995年の2倍である。
円高のビックチャンスを逃すまいと世界が日本円への投資を狙っている今、日銀は貨幣の供給量を増やすのが妥当である。日本円の供給を増やし、投資者達が離れてから、それを回収しても遅くはない。そうは言うものの、日本円がどんなに狙われていても、手をこまねいて何もしないのが、いつもの日本のやり方なのである。
近い将来、投資の熱は冷め、静まるだろう。それが引き金となって様々な事が起こる。まず、アメリカの経済は上向きインフレとなり、日本の大手企業の財政は崩壊する。そして、以前と同じように、投資者たちは自分の身を守れず大損害を受けることになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年9月30日