フランス人と結婚した私の友人が電話をしてきた。友人は数日前夫とけんかをしたと言う。彼女はしとやかでやさしく知的な人で、留学した時にアジア文化を好む男性と知り合った。二人は数年前に結婚して、たまに小さな諍いはあるが、大きな喧嘩はほとんどした事がない。
どうしたのかと訊ねたところ、彼女は「数日前にある集まりがあり夫と共に参加してアジア文化についての話をしたが、なんと夫は箸と(中国)将棋はいずれも日本人による発明だ、中国はのちに日本のまねをしたと言うので、それで自分はそれを聞いて大変腹が立ち、夫とけんかになった。夫は頑なに誤りを認めない、更に言い張るのであれば離婚したい」と言った。
わたしはすぐにとりなしをして、「ちょっと待ちなさい、箸や(中国)将棋はもともと中国のものである事は事実で間違いない、このためにけんか別れする事の値打ちはない、私達の祖先が箸を使い将棋をしていた頃、日本人はまだどの樹に食べられる果実がなるのかもまだ知らない状況だった」と言ったところ、「夫と直接話してくださいよ」と言われ、電話からはご主人のやむなしの不満げな声が聞こえてきた。彼曰く、彼が小さい時から見ていた雑誌、新聞などでは箸や将棋を含め多くのものが日本にその起源がある事になっている、今その事を妻は中国人の発明と言っていて、彼自身も本が正しいのか妻が正しいのかよくわからないとの事であった。
友人夫婦は箸と将棋が中国のものか日本のものかと言う事で口げんかをしたが、この事で彼らをまともではないと看做すのはあたらない。1940年代は中日両国では皆が、日本が起こした侵略戦争のために被害を受け、社会は崩壊に瀕した。50年代から70年代は、日本人は見えないところで力を入れて経済は日々発展した。この時、中国は各種の政治運動、つまり大躍進、四旧打破、十年の文化大革命、批林批孔運動・・・を大規模に展開していた。その時期に日本人は政府や民間ルートを通じて欧州に向かって「自分の」文化を紹介をしており、箸や将棋を含めた中国の物が日本由来のもの、即ち自らの品物として紹介された。これらの現象は近年来中国の経済力の増大に伴って全世界に中国文化センターと孔子学院が設立され、大いに中国文化を宣伝するようになったので状況は多少良くなっている。ただ、この類の先入観念は深く欧州の人々の思想の中に入ってしまっている。
端午節は「その言に充分な正当性がある」形で韓国の祝日になっており、漢方医学を世界遺産に申請する事も検討中である。日本ではマージャンを世界遺産に申請する高い呼び声が止んでいない。これらの事は西側の人々の思想の「特殊」概念に深く根づいており、依然として実際上の効果をもたらしている。我々は繰り返して努力し、これらより先に立つようにしたいと願う。そうでなければいつ何時箸や将棋が堂々たる日本国の精華になってしまうのかわかったものではない。以上の事実から見て、多分これらは物事を大げさに言って人を驚かせるだけの事では終わらないだろう。(高遠)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年10月19日