国外での文化財の返還請求には大きな困難
流出文化財のリスト作成も難しいが、国外での文化財の返還請求にはさらに大きな困難が伴う。2009年初めにクリスティーズが中国側の反対にも関わらず、円明園のネズミとウサギの銅像頭部を競売にかけた事件は、流出した文化財の帰国の難しさを反映している。
文化財の流出元の国がその「帰国」を求めることは、関連の国際条約による法的根拠があるものの、既に流出してから長年にわたる文化財、特に円明園から流出した大きな価値を持つ文化財の返還を求めることは、実際問題として大きな困難を伴う。
文化財の主権の問題では、一貫して2つの論争がある。一つは文化財を全人類の財産と見なし、最も保護に有利な博物館に置くべきであり、文化財の国籍を論じるべきではないというもの。もう一つは「最も適切な場所」という言い方を徹底的に否定し、文化財を当該民族の文化の記憶を担うものと見なし、世界各地に点在する文化の符号とすべきではなく、所属国に帰属すべきであるとするものだ。
愛国人士が文化財を買い戻して祖国に寄贈
現段階で中国の文化財の帰国の方式は、法律に基づく返還請求や国家による購入、民間の購入、寄贈などに大まかに分けられるが、特に後の3つの方法が社会から大きく注目されている。円明園の「十二生肖獣首」銅像を例にとると、牛、サル、トラの銅像は2000年に保利集団が3000万香港ドル近くを費やして落札。豚の銅像は2003年にマカオの愛国人士、全国政協常務委員の何鴻〓(〓は「火」3つの下に「木」)氏が700万香港ドルで買い戻して祖国に寄贈した。馬の銅像も何鴻〓氏が2007年に6910万香港ドルで落札して祖国に寄贈している。
この他に、中国政府の関連部門も法的、外交的な手段を駆使して、国際条約の枠組の下で、国際協力を通じて流出文化財の返還に成功している。例えば、1998年には、香港から密輸で輸出された中国の文化財3千点余りが英国から返還されている。2001年には密輸出された河北省曲陽五代王処直の墓の石の彫像が米国から返還され、2003年には河北省承徳避暑山庄博物館から盗まれた貴重な文化財49点が返還されている。
「人民網日本語版」2010年10月20日