国際市場では、日本の個人投資家のことを「渡辺夫人」と呼ぶ。彼女たち(もちろん女性だけではない)の多くは、お金を預金口座に入れておくか国債を買うかして安全路線を走る。しかし、一旦チャンスが到来すると、一部の人は市場で為替取引をしたり、ハイリスクの資産運用を行ったりする。ここ最近、円高や低金利の波に乗って、「渡辺夫人」は大きな賭けに出始めた。
日本中央銀行のデーターによると、2010年11月末時点で、日本の銀行にある個人の外貨預金の合計は、およそ4兆8300億円(約588億7000万米ドル)で、1年で2.8%上昇した。これはデーターをつけ始めた1994年4月以来の最高記録である。この記録の背景には、日本円の対ドル相場が15年ぶりの高水準をつけたという事実がある。また、中央銀行は依然として金利をほぼゼロに近いレベルに保っていることも関係する。
金利が低いと、つまりは日本円を安く借りることができる。そのため、勇猛果敢な「渡辺夫人」たちは、高い利益率を得られる投資のチャンスがやってきたと思ったのだ。オーストラリアドル、ブラジルのレアルや南アフリカのランドなどもすべて「彼女たち」の獲物である。ソニーの金融持株会社が運営するネットバンクサービスであるソニーバンクの2010年9月末までの外貨預金は、3430億円で、前年同期に比べ9%上昇したという。これらの変化は去年の夏ごろから始まった。他国の貨幣に対する日本円の相場が大幅に上昇し始めたのもこの時期である。