現代の日本の若者の心理、言動を研究していると、日本社会の最新のトレンドがある程度は掴めてくる。テレビや新聞の報道によると、東京駅から2駅離れた馬喰町では、若者が集団生活する現象が出現しているという。馬喰町は東京都心部から近く、通勤にも便利であり、庶民的な「下町」情緒も溢れている。そこに住む若者たちは、高級マンションに住もうとせず、安いマンションを借りて集団で生活している。1人1部屋あるいは2人1部屋で暮らし、キッチン、トイレ、洗濯室は共同、家賃は3~6万円だ。日本に来たばかりの中国人留学生の生活のようだ。
これら若者の大多数は給料が少ない。彼らに話によれば、集団生活をすればさびしくないし、お互いに助け合うこともできる。そして、何よりも重要なのはお金が節約できることだ。しかし、中には、高い給料をもらっていても、ここへきて集団生活をしようとする若者がいる。お金を浪費しないためだという。活気に満ちあふれた中国の80年代生まれの若者と比べ、日本の80年代生まれの若者はかなり質素だ。これはどうしてだろうか?
2009年11月、経済学者の松田久一氏が『嫌消費世代の研究』という本を出版した。「クルマを買うなんてバカじゃないの?」というフレーズが話題を呼び、出版以来、重版を繰り返している。同書に記された節約に苦心する若者の姿は人々の共感を呼んだ。若者たちはクルマを買わず、旅行にも出かけない。ブランド物の服を買おうとせず、もっぱらインターネットで安物を購入している。今の若者は、サービス券がなければ、カラオケやレストランにもいかない。極力外食はせず、家でおにぎりを食べているという。つまり、節約できるところは節約しようという考え方だ。経済学者はこのような現象を「嫌消費」現象と名付けた。「嫌消費」族には、アルバイトで生活費を稼いでいる低所得層だけでなく、会社で正社員として働く中高所得の若者も含まれている。このような若者は、見えない将来のために必死でお金を貯めている。これら若者の心理からは、「将来、何が起きるか分からない」という将来への不安をうかがい知ることができる。