日本インフレの可能性
一、日本経済は世界の大口商品の価格変動にそれほど敏感ではない。日本のCPI指数もずっとマイナスであり、デフレが続いている。2010年にはインフレ率は更に1%下がり、インフレへの道のりは遠いように思える。これは、日本の円高と企業が海外のインフレを消化・吸収する力が強いことが原因であり、日本銀行が金融政策の拡張を慎重に行なってきたことにも関係している。しかし、2002年から2008年、世界の物価が大幅に上昇し、日本企業が輸入製品の物価上昇を受け入れる余裕はなくなりつつある。日本銀行でも2011年1月に、企業の物価が1.6%上昇したと発表している。これで3カ月連続の値上がりであり、上昇傾向にあることは明らかだ。
二、世界金融危機により株価が暴落し、赤字を出してまで生き残った企業の2010年の収益は少しずつ回復しているようだが、投資への慎重な姿勢は企業の景気がまだまだ良くないことを示している。
三、以前起きた大口商品の価格高騰は、原油・鉱産物・金が主だったが、第2波は農産物や食品、工業製品などにも波及し、今後更に身近な製品へと広がりを見せ、最終的には日本の国民生活にかかわる物価そのものが上昇せざるをない状況になるだろう。
四、世界の大口商品の物価は既に上昇傾向にあり、今後長期にわたる高騰が続くだろう。そのため、2011年下半期、日本のCPI指数はプラスに転じ、2012年上半期には、日本銀行も金利を上げること考えなくてはいけなくなる。今、日本は難しい二者択一を迫られている。財政破綻が起きないように、このままインフレを見守り、ついでに国家債務の価格が下がることによる利益を得るのか、きちんと役割を果たし、過剰なインフレを抑えるために金利を上げるのか。しかし、金利を上げれば、政府の財政には大きな負担となり、財政破綻を招く危険性が強まる。
五、経済を支える天然資源が日本にはあまりない。日本の生き残りと発展は100%輸入に頼っている。輸入資源や製品の価格が上昇すれば、それに伴い日本国内での物価上昇、つまりインフレが発生する。インフレが起きれば、物価高騰を防ぐために金利が上昇し、政府の負担は大きくなり財政危機に陥る。このように、外部の要因によって引き起こされる日本内部の経済危機には、上述した防衛策は役に立たないため、防ぎようがないのだ。
日本に残されている時間は多くない