65歳の山口組の篠田健市組長が先ごろ、東京・府中刑務所を出所。まさに暴力団組長の風体だった。その後ろ、近くには相撲の訓練を受けたボディーガードが前後4カ所に1人ずつ陣取っていたが、しっかり付き添っている身辺には、組の幹部と弁護士などの顔が並ぶ。彼らはスーツに革靴、携帯でしきりに外部と連絡を取っていた。篠田組長が特別な服装をしていなければ、一般の人は高い地位の政治家が視察に来たと思っただろう。
大企業家、大政治家の貫禄
日本の企業家は普通、ボディーガードを連れていない。経団連会長など経済界の要人もそうだ。政治家で比較的長く首相を務めたことがあれば、外出時に国が1名または数人のSPを身辺に付けさせる。だが、SPを伴わなかった首相もいる。村山富市氏だ。
篠田組長の貫禄は首相クラスの政治家をはるかに超える。府中刑務所から山口組本部まで新幹線でおよそ2時間半。組長が座ったのはグリーン車。首相クラスの人物でも数列、数席に過ぎないが、組長は1車両を借り切り、組幹部やボディーガードに取り囲まれながら列車に乗り込んだ。
本部に入ると、関係者全員が90度のお辞儀をした。もし身辺にいる数人の一心不乱なボディーガードがいなければ、組長は万人に君臨する地位の高い人物だと思うだろう。
組長というこの地位に至り、すでに首相を上回る貫禄を見せていた。同時に、ほかの組織による暗殺を防ぎ、日本の警察の追及、メディアの取材や報道などに対応しなければならない。警察はいずれも顔見知り、メディアも非常に面識があり、なにも怖いものはないが、ただ、縄張りを争うほかの暴力団はかなり恐れている。85年に山口組4代目の中山勝正組長が一和会に、引き継いだ5代目の長宅勝組長も97年に中野会に暗殺された。組長はかなりの貫禄があるとはいえ、そう簡単に務まるものではない。
過去、暴力団員は「賤民」出身