福島原子力発電所事故の発生以来、日本の大衆は大変困惑している。それはなぜ福島第一原発の津波対策設計はかくも低いレベルのものだったのか、なぜ複数の安全措置のあった緊急対応電源が全滅したのか、なぜ東京電力は初期段階に最も効果的な手段を採る事をしなかったのか、なぜ政府は直ちに介入して危機対応をしなかったのか、なぜ原子力安全監督機関は雲がさえぎり霧が立ち込めるように存在がはっきりと見えないのか等々の事からである。
世論の引き続く追求の下で、一つの閉ざされた自己完結スタイルの共存共栄の原子力エネルギー官・学・財の利益集団の存在が徐々に明らかになってきた。日本のメディアはこれを「原子力村」と呼んでいる。
「原子力村」は組織として主に三つのグループで構成されている。その一つは東京電力を中心とする電力会社、ならびに日立・東芝等の原子力設備企業である。第二は経済産業省資源エネルギー庁と原子力安全保安院の官僚集団で、電力会社の行政監督部門である。第三は原子力工業、原子物理学等の分野の専門家で、主に原子力安全委員会並びに文部科学省の原子力エネルギー研究開発部門等に所属しており、その業務内容は核エネルギー政策の策定、原子力発電の安全操業の監督、原子力エネルギー研究の成果の発表等である。
これらは本来それぞれに自分の責任分担範囲があり、互いに牽制しあう関係であったが、実際の原子力発電を推進する作業の中で複雑に関係しあい、利益を共有分担する一つの枠組みを作り上げた。日本のメディアの報道によると東京電力はその中でも「先頭に立つ兄貴分」的な役割を担っている。「原子力村」の中では至るところに東京電力の人脈と金脈を見て取る事ができる。たとえば原子力委員会は5名の委員から構成されるが、そのうちの一人は元東京電力の役員の尾本彰氏である。今年1月に資源エネルギー庁を退職したばかりの前長官石田徹氏は東京電力の顧問に就任すると発表した。東京電力副社長の武藤栄則氏は資源エネルギー庁の下部組織原子力安全保安部会の委員である。