写真:4月24日、東京、「原子力から自然エネルギーに転換を」と訴えるデモ。政府に対し「脱原子力」を訴える人々がパレードに参加。
「安全神話」完全崩壊
国民が最も注目する安全性や信頼性の問題について、政府と原子力開発の恩恵を得られる経済界や専門家、或いはメディアは、再三にわたって「安全である」と国民に約束してきた。しかし、実際のところ、原発開発は最初から「お金」になるようなものではなかったのだ。1974年、日本発の原始動力船「むつ」は航行試験中に放射線漏れが観測され、幸先悪いスタートを切った。その後、回収することもできず、16年にわたり日本の港をさまよい、転々としていた。港や漁民たちは怒りと不安で、「むつ」の停泊を歓迎するところはどこにもなかったのだ。原発事故で人が亡くなったニュースも頻繁に聞こえてきていた。そして、今回のような深刻な「原発震災」が発生し、日本の原子力開発促進派の「安全神話」に対する徹底的な「崩壊宣言」と言っても過言ではない。
日本の学者は今回の震災と原発事故を第二次世界大戦のときと比べ、その共通点は「政策決定権を持つ上層部が『根拠のない自信』に溢れており、必ず勝てると思っているということだ(原発で言えば『絶対安全』と思っていること)」と指摘した。そして、失敗した後も正直に間違っていたとは認めず、二次災害をもたらし、国民を更なる不幸と災難の道に導いてしまった。
「原発震災」に対し、「マナーを守り」、「秩序を乱さない」日本の被災者たちも、原発の安全性だけでなく、原子力開発を推し進めようとする人々の動機や目的にも注目しなくてはいけない。そういった人々の目的のせいで、大量の放射線汚染水が海に流され、隣国や世界に悪影響を及ぼしている事を考えない限り、ただ「不満」や「不安」、或いは「しょうがない」と訴えるだけで終わってしまい、原発に対する大きな反対勢力になることはできない。それはつまり、第2、第3の「福島原発事故」が起こりうる可能性も今後、充分にあるということになる。
(シンガポール出身、北京大学客員教授、日本龍谷大学名誉教授 卓南生)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年4月26日