今年3月11日に発生した大地震に伴う津波被害により放射性物質が漏出した福島第一原子力発電所。その原発事故による二次災害が際限なく続いている。この度、問題になっているのは、日本人の食生活に欠かせない牛肉だ。調査の結果、放射性セシウムで汚染された稲わらを食べた「セシウム牛」がすでに500頭以上も出荷され、日本全国に流通し、そのほとんどが消費者の口に入ってしまっているという。「日本新華僑報」が伝えた。
では、なぜ、放射性セシウムで汚染された稲わらを食べた「セシウム牛」が検査の網の目をすり抜け、市場へと流通し得たのか?福島第一原発の周辺地域の肉用牛は、出荷前にすべて放射性物質検査が実施されていたはずだ。ただ、それは体表の放射線量を測るだけであった。また、体表検査に合格した肉牛が県外に出荷されると、その複雑な流通経路により、それ以上の追跡ができなくなってしまう。放射能汚染された稲わらを食べ、内部被ばくした「セシウム牛」を体表検査しても、その放射線量は正確に計測できない。屠殺・解体した後、もう一度検査を行なうが、各都道府県で検査基準が異なっており、しかも確認程度の形式的なものに過ぎない。この時点で行なう検査は抽出検査であり、抽出率は10%以下である。つまり、政府の怠慢により、これら「セシウム牛」は、簡便な抽出検査をすり抜け、消費者に渡ってしまったのである。
そして今、また、新たな問題が浮上している。検査の基準や手順が各都道府県で統一されていなかったために、日本各地で「セシウム牛」が出現し始めているのだ。まず、福島県以外の都道府県においても「セシウム牛」が誕生していると見られている。なぜなら、福島第一原発から150キロメートル以上離れている宮城県内においても、稲わらから放射性セシウムが検出されたからである。次に、福島県産のみならず、他府県産の場合でも「セシウム牛」が流通している可能性が高いことである。農林水産省によると、通常、繁殖農家で生れた子牛はしばらくすると肥育農家に出荷され、そこで良質な飼料を与えられながら肥育される。一般的に、肉牛は市場向けに出荷されるまでに何度か転売されるという。そのため、全体で何頭の「セシウム牛」が流通しているのか、今となっては、真相は闇の中である。