早稲田大学 水上弘子
東日本大震災が発生してから、間もなく半年近くになります。この半年間、世界各国から多くの支援をいただき、感謝の思いで一杯です。中国からも大型クレーン車やガソリン、毛布をはじめとする支援物資や救援隊などの人的支援、そして、多くの人々からの真心こもる義捐金をたくさんいただき、本当に感謝に堪えません。
さて、私は大学で留学生に日本語教育をしていますが、大地震が発生した時は、ちょうど春休みで、ほとんどの留学生たちは帰国している状況でした。彼らは、地震が発生したことを自分の国で知り、4月の新学期には日本へ戻れるのか、また新入生は日本へ留学できるのだろうかと不安な日々を送っていたと思います。
実際、4月からは通常どおり授業を開始することはできず、5月の連休明けから授業が始まりました。予想どおり、日本へ戻ってきた留学生は激減し、例年とは違う状況で授業がスタートしました。
初めの授業で、日本へ帰ってきてくれた留学生たちを見た途端、私は心から嬉しくてなりませんでした。なぜなら、彼らは、日本が100年に一度の国難ともいうべき状況の時で、しかも、“放射能”という見えない敵との闘いをしている時に、日本へ来てくれたのですから。
授業のクラスの人数は、例年より少なかったですが、それが幸いし、留学生一人一人とゆっくりと話す機会が増えました。彼らと接するうちに、私は目の前の学生たちを未来の大切な人材として成長させていこうと、決意するまでになりました。
ようやく前期の授業が終了する頃には、不思議にも、学生も教員も、困難を乗り越えた達成感のようなものが湧いてきて連帯感がうまれました。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」―苦しいことがあっても、時がすぎ去ればすぐに忘れてしまう、という譬えがあります。近頃、大震災発生直後のような厳しい被災状況を目にする機会が少なくなり、日本全体が、どことなく緊張感が緩んできているような気がします。報道も政局に焦点が移り、被災地の状況がわかりにくくなっています。しかし、まだまだ大きな困難に立ち向かっている東北であり、日本だということを自覚しなければなりません。
時は容赦なく過ぎ去り、これから東北は短い秋を経て、長い厳冬へと向かいます。今、被災地が必要としている物は、冬の衣類や暖を取る器具などです。「熱さ」を忘れることなく、日本全体が連帯感を持って再生を期していく必要があるのではないでしょうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年8月30日