というわけで、三洋ブランドはパナソニックに買われて、みごとに「切り売り」がなされ、もともとパナソニックが欲しかった事業部門のみが残されたような状態になっています。「セット販売で買って、必要ない付属品を売っちゃいました!」というようなものですね。
そうそう、少し話が脱線しますが、このパナソニックの三洋買収劇といえば、三洋電機の創業者がもと松下電器産業出身者であったこと、電気機器市場においてはグローバルにパナソニックと三洋はガチンコで戦ってきたこと、有名な漫画の『課長島耕作』でも当該買収劇前に、三洋と松下を想像させるような同じような買収劇が描かれていたこと、などなど、興味深いエピソードがあったことは記憶に新しいです。
結果的に、三洋ブランドの白物家電事業はハイアールが保有することになっていたわけですが、ついに昨日の報道によれば、この事業資産を本格的にハイアールが活用する段階に入ったと言えます。一言で「白物家電事業」といいましても、その中には、製造・開発・既存技術特許・ノウハウ・営業・マーケティング・ブランドなどなどいろいろな要素がつまったものであります、そしてハイアールが三洋ブランド取得時に狙っていたのは、「(ある程度の)技術・特許」と「ブランド価値」であったでしょう。とりわけ「ブランド価値」は、中国国内市場というよりもグローバル市場においては、「ハイアール」よりも「SANYO(三洋)」のほうが白物家電のブランド力が強いのは明らかで、いわゆる、メイドインチャイナとメイドインジャパンを象徴するようなブランド力の差異があるようなものと考えられますから、ハイアールは三洋のブランドが欲しいというのは判りやすい動機ですね。
これまでハイアールは白物家電についていえば、技術は高くないものの安価な労働力で製造した価格競争力のある商品を市場展開してきていました、これがハイアールの市場ポジションでもありました(低品質だが超低価格)。しかしこの10年近くは、自社技術水準があがる一方で、中国内工場の人件費向上とともに、市場ポジションが、決して「最安値」の立場をとれなくなってきた、つまり、他のブランド(とくに韓国ブランド)との競合するポジションになってきたといえるわけです。また、これまで日本ブランドは全体的に「高品質・超高価格」のポジションでありましたが、三洋ブランドは日本ブランドの中では、「中~高品質・高価格」くらいの商品ラインナップであったと思います。