文=コラムニスト・陳言
中国広東省佛山市で10月13日に2歳の女の子「悦悦」ちゃんが車に跳ねられ、転倒しているところに後続の車が接触、その後7分間に18人もの人が「悦悦」ちゃんの横を通過したものの、助けようとした人は誰もいなかった。上右の写真は、悦悦ちゃんを助けた19番目の通行人で、廃材拾いの女性陳賢妹(58歳女性)さん
自己犠牲的な精神で人民に奉仕する人の代名詞となっている「雷鋒」のことを日本人に紹介すると、彼らはとても不思議そうにする。日本でも各メディアで大々的に取り上げられた悦悦ちゃん事件についても同じく、疑問を抱かずにはいられないようだ。この数十年、「雷鋒同志に学べ」をスローガンにしてきた中国で、悦悦ちゃん事件のようなことは起こってはならないはずなのである。では、同じような問題が発生した場合、日本ではどのように対処しているのであろうか?
日本では、制服を着ている人は必ず「雷鋒」のような勤労奉仕の精神を持たなければならない。例えば、制服着用のタクシーの運転手や警備員、あるいは社章バッジをつけたスーツを着ている人はみな、困っている人に救いの手を差し伸べるはずである。自衛隊員や警察官に関しては言うまでもない。
鉄道会社の制服を着た人や勤務中の警察官は地下鉄の中でたとえ空席があったとしても座ろうとはしないだろう。なぜなら彼らは常に他人の安全を守ることだけを考えなければならないのであり、制服を着ていながら休むことは許されないのである。
制服を着用した人は、他人の安全や快適のために無償奉仕する義務があるため、ボランティアが制服を着て活動するような場面は日本では見受けられない。
日本では、交通事故を起こした当事者が現場からそのまま立ち去った場合、その罪は重くなる。「交通事故があったとき、当該車両の運転者は、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」ことは道路交通法に明確に規定されている。日本の警察は、ひき逃げ事件に対して総動員を上げ、検挙するまでその捜査に全力を尽くす。日本のひき逃げ事件検挙率は極めて高く、日本が安全な国だと位置づけられるのもひとえに警察の捜査力の賜物である。
ただの目撃者であっても、すぐに救急車を呼ぶ、警察に通報するくらいは当然の行為であろう。また、身に付けた知識を以って直ちに負傷者の救助に当たるはずである。こうした行動は、誰もが出来て当たり前のことなのである。
コラムニスト・陳言 「日本スケッチ」