文=コラムニスト・陳言
資料写真:横浜中華街の春節
日本では1868年の明治維新以後徐々に春節をなくし、全面的に西洋化していったが、横浜、神戸、長崎の中華街では春節の伝統が残っている。もうすでに中国語を話さなくなった華僑の後裔が春節前には年配者の指導で獅子舞を練習する。こうした光景は日本に長く住む華僑に故郷を思い起こさせる。中国にいた時には面倒で獅子舞を見物に行かなかった人でも、日本では故郷を懐かしみ、毎年欠かさず観に行く。
カレンダーに旧暦がなくなり、一般の日本人は春節を忘れてしまった。昔は春節もテレビで日本人に関係のないことのように報道されていたが、ここ数年は春節の雰囲気が盛り返してきている。それは在日中国人の総数が在日韓国人の数を超え、日本で最大の移民グループになったからだ。次に米大統領は春節になると華僑・華人にお祝いの言葉を述べ、日本の政治家もそれに倣うようになった。とくにこうした地域から選出された国会議員は必ず中華街に赴き、華人に縁起のいい言葉をかける。
中華街の春節の雰囲気は国内に劣らないどころか、故郷を思う気持ちからかより濃厚だ。午前中に獅子舞があり、中華料理店はどこも一杯になる。店の入口に「紅包」が吊るされ、獅子がそれをくわえていく。時には国内から雑技団を招いてめでたい雰囲気に満ちている。日本人が伝統的な祝い事に着物を着るのと同じで、中華街は伝統的な服装をした華人・華僑であふれる。服装の時代は様々で、人民服の人もいれば、唐代の服装の人もいたり、チャイナドレスを着た女性もいる。寒いためチャイナドレスのスリットからは厚手のタイツなどがのぞく。清の時代の髪を結い、牡丹の花を挿している女性もおり、国内から訪れた人や少し歴史を知っている人が見れば笑わずにはいられないだろう。
こういう服装をしているのは日本で何代も暮らす若い華人が多く、彼らは本当の唐の服装がどんなものか知らない。これは彼らにとって自らのルーツを表現する符号に過ぎないのだ。