「一時的な要因」の長期化を懸念
白川方明日銀総裁は1月24日、金融政策決定会合後の会見で、輸入と輸出の構造の変化を見ると、2011年の貿易赤字転落は主に東日本大震災および原発事故の影響によるもので、「一時的なもの」にすぎず、貿易赤字の定着は考えられないと語った。
ところが、こうした「一時的な要因」が長引くことを多くのエコノミストは心配している。電力の構造変化を例にすると、福島の原発事故の影響で、原発ユニット54基のうち50基が事故や定期検査のため稼動を停止し、残りの4基も今年4月から定期検査を開始する。定期検査を受けている原発が予定通り稼動を再開できなければ、今春以降、日本の発電量の3分の1を占める原発が完全に発電を中止する。電力不足が生産と輸出に影響し、火力発電の増加がエネルギー輸入をさらに拡大させ、輸出と輸入の両方に響くことになる。
日本経済研究センターが出したレポートによると、原発中止で日本は化石燃料の輸入を年間3兆円ないし4兆円増やさなければならない。また、2012年に日本が直面する主なリスクは電力不足のほか、ユーロの大幅安による円高、中東地域の政治リスクによる原油価格高騰、首都圏直下型地震などの大型自然災害発生の恐れなどがあると同報告は指摘している。こうしたリスクは、いずれも日本の生産と貿易の情勢に新たな悪影響をもたらしている。
日本の財務省は、欧州債務危機の先行きを含む輸出入に影響する各要素に注目する必要があると表明した。財務省によると、昨年第3四半期、自動車をはじめとする主力製品の生産量や輸出は回復し始めたが、欧州債務危機の影響で第4四半期は再び大幅に萎縮した。欧州経済の低迷続きや円の対ユーロ為替レートの急上昇により、対欧州輸出への影響は長引く見通し。また、欧州債務危機が世界経済の成長を遅らせれば、その他の地域との貿易環境も悪化すると見られる。
近年、輸出で利益を得てきた日本の家電業界では、生産の海外シフトが後を絶たず、基幹産業の自動車産業も歴史的な円高を受け、日本製も海外の部品をますます多く使用せざるを得なくなっている。日本自動車工業会の志賀俊之会長は、現在の日本の自動車産業は「全面的な空洞化」の危機に直面していると指摘。輸出で儲ける企業の日本からの重心シフトは、貿易赤字の長期化をもたらす可能性があるという。
緊急課題は貿易構造の調整