東南アジアの資源と戦略的位置に未練たっぷりの日本が心配しているのが、その東南アジアにおける中国の存在だ。毎日新聞は、近年中国がメコン川に橋をかけたり道路を整備したりと、その流域の開発に力を入れていると報じている。だがその一方で、ミャンマーが中国と共同で進めていた水力発電用大型ダムの建設を中止したことや、南海問題によってベトナム等の国々と中国との間に亀裂が生じていることを挙げ、これらの国が中国と距離を置くようになったとも報じている。
2008年までは、日本がASEAN最大の貿易パートナーであり、中国は3番目だったが、2011年に中国が日本を抜いてASEAN最大の貿易パートナーとなった。同時に、中国とASEANの協力態勢も深化し、中国はここ数年で東南アジアの国々の道路や橋、水力発電所等、大量のインフラ建設プロジェクトに投資し、更に高速鉄道網や石油パイプラインの整備を企画しており、多くの中国企業もASEANへの大きな投資を始めている。
中国に後れを取らぬよう、日本も東南アジアへの投資に力を入れ始めた。2012年の前半3ヶ月においてベトナムに投資を行った26の国と地域のうち、日本は第一位で、新しく許可された投資及び追加投資の資金総額の実に88.8%を占めている。企業投資と共に増えているのが日本政府による援助で、主にインフラ建設に対して行われている。情報によれば、インドネシアの水力発電量の61.5%、フィリピンの道路の51%、カンボジアの港湾や海港の73%が日本政府の援助によって建設されたものだという。また、タイの『The Nation』は、日本自動車工業会はずっとタイ市場に目をつけており、タイ自動車業界における投資は、その70~80%を日本が占めていると報じている。
シンガポール国立大学東アジア研究所上級研究員の藍平児(ラム ペン アー)氏は、『環球時報』の取材を受けた際、次のように述べている。中国と日本のメコン川流域国家との協力をめぐる競争には、それぞれの利益的考慮が存在するが、全体的に見て、地域経済統合の促進剤となっている。また、カンボジア平和協力研究所のチェーン・ヴァナリット専務理事は次のように語る。東南アジアにおける日本と中国の投資は実質上、相互補完性を持ち、経済領域の健全な競争は各方面に利益をもたらすことになる。しかし、ASEANは中日両国が当該地域において政治戦略面での競争を展開することを望んではいない。なぜなら、それは当該地域に危険の火種をもたらすことになるからである。
だが、日本の考えは東南アジアの学者たちの想像とは明らかに違う。「金銭外交」以外にも、日本は米軍と共同でフィリピンの軍事基地を利用した軍事訓練を行う予定との報道もある。英国BBCによれば、近年、日本と中国はともにASEAN地域における影響力拡大に力を注いでおり、経済大国第二位の座については、すでに決着がついているものの、ASEANは南中国海問題において、日本は東中国海主権問題において中国と対立していることから、これらの国々と日本との関係が親密化しているという。また、日本のメコン川流域国家との協力は、経済的要素の他、政治的に中国を制圧する意味合いも含まれているという。
日本の対外援助は、その「政治大国」戦略の延長であるとの見方もある。日本の東南アジアに対する援助はどの国に対しても同様に行われているわけではなく、そこには明確な選択と志向性が存在している。援助を行うにあたっての条件の中には、被援助国の防衛や外交政策に関わるものもあり、その国防や対外関係に影響を及ぼしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年5月2日