■「私は自衛官の息子として、安保の重みを感じ取ってきた」
巨大な軍需産業を抱え、戦争を熱愛し、毎年戦争を発動する国で、民衆に自分を理解してもらうためには、軍人のバックグラウンドを強調するのが一番だ。「私は自衛官の家庭に生まれ、父や軍人の背中を見て育ち、日米安保の持つ重みを肌で感じ取ってきた」。野田首相は4月30日、クリントン国務長官主催の夕食会で、自らの軍人のバックグラウンドと日米(軍事)同盟の重要性をこのように強調した。
民主党政権発足後、日米関係は順調でない状態が続いた。鳩山時代の「東アジア共同体」に米国が不快感を抱いたことに加え、米軍普天間基地の移設問題で日米間の亀裂は深まり続けた。菅直人首相は日米軍事同盟を特に重視していたものの、地震と原発事故への対応に傾注せねばならず、この問題には手が回らなかった。
移設費用はいったいいくら払うべきなのか、日本は米軍の費用をいくら肩代わりする必要があるのか、日米首脳会談の前に、外務・軍事の専門家は会談を重ねてきた。米軍は世界のどこに駐留するのでも相手国に土地借用費用を支払わなければならない。だが日本に対してだけはいかなる費用も支払う必要がないうえ、巨額の費用を肩代わりしてもらっている。だが今回の移設で日本政府が一体いくら肩代わりするのかは、米国の交渉次第だ。米側から見れば当然多ければ多いほど良い。米高官は口を開けば「最低31億ドル」と言い、米国が日本に支払うべき現在の軍事基地の原状回復費については口を閉ざし、反対に日本側に平然と負担を要求した。
日本は米軍費用の肩代わりに関しては、巨額の財政赤字も全く考慮する必要がなく、28億ドルの拠出を決定した。日本メディアは米軍が日本側に基地使用費を払うべきという点には一社も触れず、米軍費用の肩代わりを少し減らせないかということしか口にしない。