中国における日本研究で最高権威となる年次報告書「日本発展報告」(日本青書)がこのほど発表された。青書は日本の政局について、「複合的な災害を契機に安定するということはなく、政党政治の構造的問題が国家の発展と危機対処に及ぼす悪影響が一層浮き彫りになっている」と指摘。「2011年の経済指標は災害復興のさなかにある日本の経済成長が抱える不確定性を予見している」との見方を示した。
中華日本学会、中国社会科学院日本研究院、社会科学文献出版社が共同出版した同青書は、「東日本大震災 日本は国難をどう乗り切るか」に焦点を当て、震災が日本の政治、外交、経済、社会・文化に与えた影響を回顧・分析した上で、今後の展望を行った。
青書の要旨は以下の通り。
▽日本の政治は低迷が続く
政党政治が民主政治の初志から離れ、政権獲得を最大の目的とした政治構造が鮮明化する中、与野党は国難にあっても足並みをそろえることができず、災害復興に向けた「統一戦線」の構築も難航した。災害発生後、当時の菅直人首相は災害対応に向けて、谷垣禎一自民党代表に「大連立政権樹立」を提案したが、当時の政党政治の枠組みでは当然のごとく拒否された。
未曾有の複合災害を前に、日本政府の危機管理能力が試された。震災予防や救助については、日本は豊富なノウハウを持ち、各機関の職員も日ごろから訓練を受けている。しかし発生した事態が想定範囲を上回ると、責任逃れの体質や意思決定の遅さなどが露呈してしまう。菅首相はリーダーシップのなさとチームワークの悪さを批判され、辞任を余儀なくされた。民主党政権は発足丸2年にして3人目の首相を選出し、1年1首相という政治ショーを再び演じた。
首相の交代で政治の枠組みに根本的な変化が起こることはないため、日本の政治の低迷は今後も続くとみられる。こうした中で政治再生に向けた動きが特に注目される。2011年、日本は重大な危機に直面したにもかかわらず、長期的に不安定な政局には改善の兆しが少しもみられず、国民は伝統的な政党および政治的駆け引きに失望感や嫌気を抱いている。国民のこうした失意は、新政党、地方政党、新政治に付け入るすきを与え、政治改革や過激主義の機運が高まる雰囲気さえ漂わせている。