▽歴史的転換期を迎えた日本の経済モデル
日本経済は震災の影響で、2011年第1四半期(1-3月)、第2四半期(4-6月)にマイナス成長に転じたが、工業生産の急速な回復と電力不足の緩和に伴い、第3四半期(7-9月)には明らかなV字型の成長がみられた。だが欧州の財政危機や円高、タイの大洪水のあおりを受け、第4四半期(10-12月)には回復が鈍化した。
日本の民間機関、中央銀行、政府は2012年の経済成長率を1.9-2.2%と見込んでいる。一方、日本内閣府が今年3月8日発表したデータでは、2011年1-12月の国内総生産(GDP)実質成長率はマイナス0.7%だった。寄与率の内訳は、民間需要がマイナス0.2%、公的需要が0.3%、純輸出がマイナス0.8%。2011年の貿易収支は1兆6100億円と、貿易統計を開始した1980年以来初の赤字となった。経常収支については、日本企業が新興国で営業利益と利息収益を伸ばしたことを背景に、投資収益が前年比19.9%増の14兆3千億円に達し、9兆6300億円の黒字を維持した。しかし規模は1985年以来最悪の前年比43.9%減となった。
こうした状況を招いた根本的な原因としては、戦後の日本が歩んだ特色ある立国戦略が頭打ちとなり、日本経済モデルが転換期を迎えていることが挙げられる。それには、経済グローバル化の進展と新興国の台頭が背景にある。アジアの新興国に比べると、日本は人件費や法人税が高く、加えて円相場やエネルギーコストが上昇していることから、産業的な競争力が打撃を受け、産業の海外移転に拍車がかかっている。2012年、日本経済は2%前後の成長を実現するが、デフレが継続するため、震災復興に伴う成長も長続きはしない。ましてや建築・土木業を中心とする震災復興プロジェクトは被災地が求める雇用職種ではなく、被災地が目指す産業構造でもない。このほか、欧州財政危機が経済に与える影響も依然続くとみられる。