実のところ、自分がこういう風になったのは、本当に精神を病んだせいかも知れない、と小田切さんも思っていた。いつもボランティアに助けられているのに、あんな態度をとってしまったことに、小田切さんも後悔していた。自分は人としてダメだ、とも思うようにまでなり、周囲の人らが自分を冷たい目で見るようになった、と思い込み、最後には、こうしたストレスに堪え切れなくなり、自ら死を選んだのだった。
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「心のケア」ボランティアの活動が、なぜ被災者の心のバランスを崩してしまったのだろう?NPO「心のケア」に専門の人材が不足している事が主な原因なのかもしれない。
3・11地震が発生した直後は、避難民の数が膨大だったため、心のケアが必要な人の数も過去最大に上った。地震発生後、さまざまなNPO「心のケア」ボランティアセンターが結成されたが、日本ではもともと精神科医やカウンセラーの数が少なく、ボランティア活動に参加できる専門の人材がまったく足りていなかった。
データによると、被災地に出向き、心のケア活動を行なったボランティア組織は762にもおよぶ。ほとんどが大学生やフリーターで、心のケア活動などしたことのない一般人ばかりだ。専門の精神科医やカウンセラーが占める割合は1%にも満たない。
一人ひとりの社会貢献の志がどんなに立派であったとしても、こうした寄せ集めチームでは、被災者の心の傷を癒すことは甚だ難しい。体系的に未熟な状態では、心のケアの「押し売り」をしてしまうだけであり、結局は悲劇をまねいてしまうということも起こり得るのだ。
被災者に対する心のケアは大規模で系統的な業務である。日本政府が責任をとらず、NPOらの無秩序な活動のみに頼っていては、今後も悲劇が繰り返されるだけである。(文=蒋豊)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年6月13日