周鶴さんの自信満々な態度と「学生ビジネスマン」の実績から、周囲も彼が日本で成功すると確信するようになった。彼の高校時代の指導教員ですら、彼の両親代わりにこう発言をした。「周鶴のような能力のある子供は、大きな舞台で活躍するほうがいい。中国の大学を再受験するより前途がある。」
3か月後、留学仲介の会社を通じて、得意満面の周鶴さんは、念願の日本、大阪へやって来た。
語学学校へ入学したばかりの周鶴さんは、日本語があまりできなかったため、ガソリンスタンド清掃の仕事に就いた。時給は700円だった。数週間仕事をしてみて、周鶴さんは屈託した気持ちになった。下を向いて掃除をする毎日は貴重な人生の無駄だ。時間は「大事」を成し遂げるために使いたい…。
クラスに、バーでアルバイトする男子学生がいた。チップも多いし、見識が広がると言う。チップのことより、バーにやって来る玉石混交の人々を思った。ひとかどの人物に出会うことで、チャンスが訪れるかも知れない。しかしバーで数日働いた周鶴さんは、またもや辞めてしまう。バーにやって来るのは、自分とさほど変わらない若者と、身分の知れない美女だった。前者に対しては一生懸命サービスし、後者に対しては媚へつらう。プライドの高い彼には屈辱以外の何物でもなかった。