早稲田大学副総長 中国の学術機関との交流を語る

早稲田大学副総長 中国の学術機関との交流を語る。

タグ: 早稲田大学 中国 留学生 少子高齢化 

発信時間: 2012-08-13 14:30:13 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

中国網:なるほど、長い歴史の中で交流が熟成してきた過程がうかがわれます。

現在、反対に貴大学で受け入れている留学生は何人くらいでしょうか?また、国別の割合はどうなっていますか?また、どのような分野を学んでいる留学生が多いですか?

内田:早稲田大学で学ぶ留学生は2011年11月の統計によれば、学部生1676名、大学院生2239名、国際教養学部プロジェクト153名、日本語別科212名の合計4280名に及びます。留学生の出身国・地域別の割合は、中国からの留学生が1916名で全体の44.76%を占めます。続いて、韓国が25.65%、台湾が7.05%、アメリカ4.16%、タイ2.15%となっています。留学生の所属学部・研究科は、国際教養学部が822名在籍しており全体の19.20%、情報生産システム研究科383名受入れており8.95%、その後、アジア太平洋研究科、商学研究科、日本語教育研究センター、政治経済学部、経済学研究科、国際情報通信研究科と続いています。本学に所属している留学生は、中国へ留学している本学の日本人学生と同じく、文系理系を問わず様々な分野で学んでいることがわかります。

中国網:多様な留学生と触れ合われる中で、中国と日本の教育ではどこに違いあるとお考えですか?また、その理由はどこにあると思われますか?

内田:1960年代後半から大学への進学率が上昇し、多様な学生が大学に進学するようになりました。それに伴い、日本の高等教育はエリート教育から大衆教育へと舵をきり、従来型の画一的な筆記試験から、より柔軟な受験制度へ改革し、異なる背景を持つ幅広い人材を集めることによって、大学間が特色を強めていることになりました。その結果、日本の大学の類型的な役割分担が生まれました。一方、中国も2000年代以降教育は大衆化し、かつて日本の歩んだ道を辿っているように見えますが、中国の大学受験者数は、日本の約20倍の1000万人を超えていますので、大学数が増加したとしても、日本とは比べられないほど熾烈な受験競争に学生は晒されています。加えて、中国は一人っ子政策の影響もあり、親が子どもの教育にかけるひとしお期待も大きいと思われます。そのため、大学受験の影響は、大学から高校へ、高校から中学校・小学校にまで及び、受験対策の学習が日本よりも重視されているように思われます。

高等教育における違いは、日本は早稲田大学のような大規模な大学におきましても、大教室での座学形式の講義もありますが、あくまでも授業の基本は少人数のゼミ形式が主体となるということです。日本では、学部生のうちから理系は各研究室に、文系は各ゼミに所属し、指導教官のもとで少人数の仲間と切磋琢磨し成長できます。このようなきめ細かい教育システムは日本独自の利点だと思います。中国のみならず欧米諸国の大学と比べましても、日本のゼミ形式授業は特筆すべきものであり、研究室やゼミを通して専門性を深め、多くの志を同じくする仲間を得ることができます。

日本と中国の教育における共通項は、先ほど述べました大衆化とグローバル化の2点挙げられます。大衆化時代においては、各大学は自律性・自主性に基づき、それぞれが有している幾つかの機能のうちいずれかに重点を置くことにより、その比重の置き方の違いを通じて緩やかに機能別に分化してゆくことが求められています。そして、各大学が特色を活かし、連携を深め、相乗効果が増すことによって、地域・社会の抱える課題の解決や雇用創出につながる人材育成を行うことができると考えられます。

また、グローバル化という大きな流れは、日本と中国は共通していますが、その政策は異なります。中国は国家と各教育機関が一丸となって留学を率先させ、国際社会と共同で人材を育成しようと試みています。その風潮はCSC(中国国家留学基金)の多様な奨学金制度の設立で、より鮮明となり確固たる目標のために計画的な行動に踏み出しています。日本の大学のグローバル化は、留学生の受入、日本人学生の海外派遣を通じてキャンパスをグローバル化することを基本としています。昨今、日本の学生は内向き傾向にあるといわれ、直接海外の大学で学ぶ学生は減少していますが、日本の大学に入って、そこから海外の大学に交換留学に行く学生は逆に増えています。これは国際社会において活躍できるグローバルリーダーの育成が求められている大学教育においては、熟慮しなければならない傾向ではあります。ですから、CSCに象徴される一連の中国の政策には日本の各教育機関も日本の実態に合わせて参考にしなければならない点が多々あると思われます。

 

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