中国企業からすれば「安全性」を訴えるために、「企業体質がかわりました!業界構造がかわりました!」とイメージを再度定着するのは諦めて(諦めたというのは言いすぎかもしれませんが、消費者の悪いイメージを払しょくするのは相当時間がかかると考えているでしょう。)、それよりも、「食品安全性グレーの通常版」はそのまま出すことにして、「完全に安全な高級版」を出すことによって、ピンチをチャンスに変えてセグメンテーションしてしまった、というようなものでしょう。
今後、必至に業界がとりくんでいる「安全性」も高められていくでしょうから、国内産牛乳の一般価格レンジのほうもそれなりに信頼感を得ていくのでしょうが、メラミン事件で明るみになって根深い「業界体質」の問題は簡単に変えられなそうですし、消費者のマイナスイメージ払拭にも相当に時間がかかるでしょう。しかし、苦肉の策で頑張った機能性牛乳の開発への舵取りとマーケットのセグメンテーションへの相当の努力によって、マーケティング的には良い方向に向かったのでは?というのが、僕が考えです。(すくなくとも、これだけ急ピッチで新しい需要を開拓しようとしなかったように思います。)
今後は、欧米・日本等の先進国がたどってきた道をトレースすれば、乳製品を扱う中国企業がさらにこのマーケティングノウハウを蓄積していくと、キャラクターを一緒にくみあわせた乳製品、玩具がついた乳製品なども登場し、コンテンツ産業とのコラボレーションもどんどんと進んでいくでしょう。さらに、商品力があがってくれば、今までは考えられなかった、中国製牛乳の海外輸出なんてこともでてくるかもしれません。
いずれにしても、冒頭の話に戻れば、海外で粉ミルクの需要が高まっているというのは、これまでと同じ中国内の「食の安全」問題を反映したものですが、実は中国市場の末端では、こうしたピンチがチャンスに変わり始めていて、面白い状況になってきています。今はまだ、東京の新宿伊勢丹で「三元」「光明」「蒙乳」などの乳製品をみかけたことは僕はありませんし、もしあったとしても、とても違和感を覚えますが、今後、世界的なブランドの「クラフト」や「ダノン」のように乳製品を扱う巨大多国籍企業が、中国発で成長してくるかもしれませんね。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年5月13日