これらを背景とし、ソニーのテレビ事業は2011年末より調整を開始し、役員人事異動により今村氏にテレビ事業を担当させた。またディスプレイのサプライヤーの増加、世界の工場の調整、製品の改良といった一連の黒字化の措置を講じた。2012年4月にCEOに就任した平井一夫氏は、「1つのソニー」というモデルチェンジを提案し、テレビ事業とその他のハード・ソフト事業の統合を強化した。
この調整の効果は今年第1四半期に現れた。ソニーの連結決算によると、同社のテレビ事業は黒字化を実現した。今村氏は、「これは一時的なものではなく、2013年度の黒字化に自信を持っている。現在得られた成果は、当社の方針と戦略が効果的であることを証明している。当社は計画通りに調整を進めていく」と表明した。
しかし市場を見ると、ソニーの需要市場である欧米市場の需要の疲弊には、根本的な変化が生じていない。現在の競争構造を見ると、韓国企業のサムスンがソニーの前を塞ぎ、中国ブランドのTCLや創維(スカイワース)が後ろから猛追するという情勢にも変化が生じていない。ソニーが的を絞る新興市場において、中国企業が最大の脅威となる。