「安倍首相が訪朝するかもしれない」という情報が世論に衝撃を与え、大きな関心を集めている。安倍首相は記者に対し、訪朝について「今、判断するのは早計だ」と語ったが、こうした曖昧な態度は、訪朝の可能性が高いことを示すものと受け止められている。中日関係や日韓関係など周辺外交に難題を抱えながら、安倍首相が突然「平壌カード」を切ったのにはどのような意図があるのか。
支持率を高める手段に
安倍首相訪朝の情報は、日朝両国が5月29日に発表した両国の合意にかかわる。この合意には、朝鮮側が日方人拉致問題についてできるだけ早く再調査することや、日本側がその見返りとして朝鮮に対する経済制裁を解除することが盛り込まれている。合意達成は、日本の主流メディアによって安倍外交の重大な成功として報道された。
日朝の急接近を促しているのは何か。ある日本メディアによると、消費税が4月1日に5%から8%に引き上げられたことで、4月と5月の消費は大幅に縮小し、市場には悲観的なムードが漂っている。さらに深刻なのは、企業や経済学者が「アベノミクス」とりわけその「第三の矢」とされる成長戦略に疑いの目を向け始めていることだ。こうした状況下で、安倍首相が拉致問題の交渉を利用し、外交上の「平壌カード」を切ることが、支持率を高めるための選択肢の一つとなった。
米国との協議なしには行動できず
安倍首相が訪朝するのか、その時期がいつになるかは、メディアの関心の高い重大問題となっている。だが安倍首相の訪朝は簡単な問題ではない。米国と協議することなしには、安倍首相は平壌を訪問できず、金正恩と会うこともできない。つまり安倍首相の訪朝は米国の態度にかかっている。
だが東北アジアの国際政治で、米国の最大の頭痛のタネになっているのが、朝鮮の「核保有」の問題だ。米国が朝鮮に圧力を加えて成果を得られていない状況で、朝鮮に対する経済制裁の解除を日本が突然宣言し、さらに安倍首相訪朝のニュースが伝わってくれば、米国人の目に安倍首相はどう映ることになるか。彼らが不愉快に感じることは間違いない。安倍首相が米国に先駆けて訪朝するためには、米国を説得するための十分な理由を見つける必要がある。