富士山麓の演習場で訓練を指導する幹部は、「『国を守る』という目的は何ら変わらないでしょう。しかし、今の議論は『どうしたら閣議決定できるか』だけが焦点になっている。要するに私たちの実際の任務をどうするかは二の次」と語る。
自衛隊員らは焼き鳥をつまみながら、次々と本音を打ち明けた。「不安がないと言えばうそになる」。ある陸自幹部は、憲法解釈の変更にあたっては「本来、武器の使用基準や部隊行動の判断基準なども含め、精緻な議論をすべきだ。だが、十分に尽くせたか疑問に思う」と語る。
30代の陸曹長は「国際貢献や災害派遣で人の役に立ちたいと入隊したのに、自衛隊の活動内容の拡大に歯止めがかからなくなると、自分の命の問題になってくる。命をかけて国を守るのは建前だが、正直不安しかない」という。
不安を感じているのは自衛隊員の家族も同じだ。夫が自衛官という東京在住の31歳の女性は、夫が自衛隊のことをあまり語らないので心配になり、集団的自衛権の容認に関する各新聞の世論調査の結果を集め始めた。「国民の意見が割れていることは明らかでしょう。そんな状況の中であわてて決めても、いざというとき国民は自衛隊の活動を支持して、隊員や家族を『守って』くれるのでしょうか」
北海道に駐屯する息子を持つ51歳のサラリーマンは語る。「憲法解釈の変更は、肝心な国民の声を聞き漏らしているように思える。息子は何も言わないけれど自衛隊にとっては大きな転換点。国民の理解と後押しは本当にあるのか」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年7月19日