人間性が感じられる現場「ブースの仕事」は“高大上”だけでなく、人間味を感じる一面もあるという。蔡氏にとって、通訳の場でたびたび出会う予想外の出来事はとても面白いものだという。忘れられないエピソードとして、朱鎔基総理の通訳をしたときのことを挙げた。「朱総理は、通訳に対して思いやりをもって接しられました。昼食のときにはわざわざ、『私はあまり話さないから、たくさん食べてください』との言葉をいただきました。その親しみやすい人柄に心から感激しました」と当時を思い出す。またこんなこともあった。ある武漢での会議が終ったあとの食事のときのこと。職業柄のどには気を遣っている蔡氏であるが、主催者側から出された「武昌魚」をいつもの習慣で早く食べようとしたところ、骨がのどに刺さってしまった。しかし飛行機の時間が迫っていたため、現地の医者に行くことができずにそのまま搭乗。「飛行機から飛び降りたいぐらいの痛さ」をずっと我慢したという。さいわい会議の前でなかったので良かったが、いま思い出しても怖いと振りかえる。
仕事を一切おろそかにしない蔡氏だが、自分の性格については内向的と分析している。「人と話すのがあまり得意ではないので、フリーの通訳という仕事を選びました。フリーの通訳は実力が頼りです。仕事がうまくいけば、自然と業界内で評価が高まります」といい、これまで何度か別の道を薦められたこともあったが、「文学が好きな私には通訳の仕事が一番あっている」と語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年8月20日