モディ首相は、日本で安倍首相と共に中国を批判することを避けた。当然ながらこれは、インドが中国の不興を買い、印日関係を同じく重要な印中関係に影響を及ぼしたくなかったからだ。インドという地域の大国の首脳は、熟慮するまでもなくこれを回避しようとするだろう。
インドを抱き込み中国を抑制するという非現実的な幻想は、増長する安倍首相と閣僚が、インドという底知れぬ戦略的な国を理解する力も、そのつもりもないことを示している。
インドは非同盟運動の創始者で、世界で最も由緒正しき非同盟の伝統を持っている。ネルー元首相が残したこの戦略的な資産は、インドが大国・強国の夢を実現するための重要な基盤だ。インドは米国の指揮棒にすら従わないのだから、日本の軍事安全戦略に取り込まれるわけがない。
モディ首相は「発展」、「改革」の旗印を掲げて首相に就任した。この「経済の首相」の最も重要な任務は、インドの経済・社会問題の解決だ。モディ首相の就任後で初となる外遊は経済協力を重視し、全面的に「発展の同盟」を構築しようとしている。安倍首相はインドと「軍事安全同盟」をPRしようとしているが、これは自ら恥をかくようなものだ。
インドは世界の大国という夢を持っている。インドが国内改革を推進し、発展の目標を実現する前提条件の一つは、安定的で穏やかな、バランスのとれた外部環境だ。インドがアジアの対立に巻き込まれ、ある国が他国に対抗するためのコマに成り下がろうとするはずがない。安倍首相がインドと共に対抗しようとする中国は、2年前に米国を抜きインド最大の貿易相手国になっているのだからなおさらだ。
安倍首相は就任以来、「地球儀外交」に熱中しており、外交予算が足りなくなっているほどだ。地球儀外交の実質の一つは、中国を対象とする「包囲の外交」だが、これは完全に身の程知らずというものだ。