等式は成り立たない?
多くのエコノミストは、日本経済の苦境は短期的・周期的な需要の疲弊による結果ではなく、より深い構造上の問題であり、これを改善するのは極めて困難と判断している。
日本が直面している最大の課題は、人口構造だ。日本の人口は減少を続けている。1990年代中頃、生産年齢人口はピークの8600万人に達した。その後この人口は減少を続け、今や7700万人のみと1000万人弱も減少した。
日本の出生率は約1.3人で、多くの欧州諸国と相当するか、やや上回るほどだ。しかし英国、フランス、ドイツ、イタリアなどの国は労働者の移民を受け入れており、人口減少の衝撃を緩めている。しかし日本は大規模な移民の受け入れに反対している。
ゆえに日本の高齢化、人口減少のペースは、すべての先進国を上回っている。
より多くの人を雇用するか、1人当たりの生産性を高めなければ、成長は実現できない。安倍首相もこの単純な経済ルールから逃れられない。
日本では経済成長の等式が成立しないが、これはなぜだろうか?
安倍首相は輸出拡大による苦境脱却に期待を寄せているようだ。国内で売れないならば、外国人に売ろうというわけだ。輸出を促すため、安倍政権は大幅な円安に取り組んだ。安倍首相の就任時と比べ、円はドルに対して約25%安くなった。
円安で日本の輸出製品の価格が安くなり、欧米人と中国人が購入する量が増えるのだろうか?しかしこの戦略も奏功していない。
日本の輸出額は2013年に減少し、今年もほぼ横ばいとなっている。これは2008年の金融危機の余波が残り、海外の需要が疲弊しているからだ。
より懸念すべき問題は、日本で製造されない日本製品が増えていることだ。日本の大企業はこの20年間、多くの雇用機会を米国、中国、東南アジアに輸出した。
本国以外で生産される「日本車」は来年、初めて国内の生産台数を上回ることになる。円安は東芝のような大企業にとっては確かに朗報で、東芝は過去最高益を実現した。しかし日本国内の工場で生産される自動車の需要は増加していない。