アベノミクスの「賃金上昇」と「雇用充実」の実態

アベノミクスの「賃金上昇」と「雇用充実」の実態。

タグ: アベノミクス 賃金上昇 雇用充実

発信時間: 2015-01-20 16:09:34 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

賃金の上昇と雇用の充実は「アベノミクス」の重要な政策目標とされてきた。安倍首相は12月の総選挙で次のように繰り返した。平均賃金は2014年、15年ぶりの水準となる2%の上昇を記録した。失業率も3.5%にまで下降し、有効求人倍率は1.0を超えた。「アベノミクス」は確かな成功を収めつつある、と。だが賃金上昇と雇用拡大という2つの政策目標は、完全に実現されたとは言えない。

まず賃金上昇の状況について見てみよう。日本の賃金所得は長期にわたって低水準にとどまり、長期的なデフレと経済低迷を引き起こす制約要素となってきた。第2次安倍政権1年目の2013年、労働者の平均月収は3年連続減の31万4054円にとどまり、1990年以降の最低となった。つまり2013年の経済成長の利益は企業によって独占され、一般労働者は及ばなかった。

政権2年目の2014年、名目賃金は確かに上がった。労働組合「連合」の調査によると、2014年の春闘後の平均賃金は2.07%の上昇となった。だがこの上昇にありついたのは「連合」に加盟する大企業だけで、これらの企業は企業総数の12%に過ぎず、労働組合のない中小企業は統計に含まれていない。

さらに消費税が3ポイント引き上げられたことで物価は急上昇しており、実質賃金所得は減少している。月によって状況は違うが、実質賃金の減少幅は1.5%以上と推定される。2014年10月を例に取ると、労働者一人当たりの固定給は0.4%上がって24.万2千円となった。だが価格変動の大きい品目を除いたコアCPIは前年同月比で2.9%上昇した。賃金の上昇幅は物価の上昇幅を大きく上回り、庶民の実質購買力は実際には下がっている。こうした状況は個人消費の拡大にも影響し、国民経済を悪循環に陥らせている。

次に雇用状況について見てみよう。「アベノミクス」実施2年で、失業率は4.3%から3.5%に縮小し、就業人口は100万人近く増えた。これも景気回復の結果だとされる。だが2013年以降の景気上昇は多くの要素が働いた結果であり、「アベノミクス」だけでもたらされたものではない。失業率の縮小や就業人口の拡大などの表面的な現象をさらに詳しく分析すると、雇用増加の大きな部分が非正規労働者によって占められていることがわかる。雇用が不安定で賃金が低い非正規労働者は現在、就業人口の38%にまで高まっている。日本厚生労働省が昨年10月に発表した「毎月勤労統計調査」によると、正社員は前年同月比7万人増の3298万人で、増加幅は0.2%にとどまった。非正規労働者は同比16%増の1980万人で、増加幅は0.8%だった。非正規労働者の増加率は正社員のそれを大きく上回っている。現在、正社員の基本給は平均30万6千円だが、アルバイトなどの非正規労働者の平均月収は9万7千円で、その差は3倍以上に達する。非正規労働者の増加は社会全体の所得水準を押し下げている。(張季風 中国社会科学院日本研究所研究員・博士課程の指導教官 )

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年1月20日

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