日本の2013年度の実質GDP成長率は2.1%に達し、個人消費や雇用、設備投資などの主要な経済指標もまずまずの数値となった。だがこのことは「アベノミクス」が成功していることを意味してはいない。短期的な回復は「アベノミクス」だけでもたらされたものではないからだ。経済理論やこれまでの実践からは、景気の上昇や後退にはさまざまな要素が働いていることがわかっており、今回の成長も例外ではない。
もっとも「アベノミクス」がもたらした経済刺激の効果は否定できない。日銀は2013年4月からQQE(量的・質的金融緩和)政策を実施し、長期国債の大量購入を始め、マネタリーベースは146兆円から現在の270兆円余りにまで拡大された。財政出動も2013年には13兆円、2014年には5兆5千億円に達し、最大規模の18兆5千億円にのぼった。こうした強力な刺激策が一定の効果を生むのは当然で、政策の打ち出し後、日経平均株価は急上昇した。長期にわたって日本経済を制約していた円高も抑制され、2割以上の円安となった。資産効果で個人消費はいくらか拡大し、円安で輸出もわずかに回復した。公共投資の拡大によって内需も拡大し、経済回復を直接促す力となった。
だが経済成長にはほかのさらに重要な原因がある。第一に、経済の周期的な循環の働き。第2次安倍政権発足前、日本経済は7カ月にわたる衰退局面を経て、2012年11月に底を打っていた。日本は安倍首相が政権に就いた2013年から戦後16回目の景気循環の拡張期に入っていたのである。つまり誰が政権を取ろうと、「アベノミクス」があろうとなかろうと、日本経済は成長局面を迎えていたと考えられる。第二に、消費税の引き上げ前の「駆け込み需要」の働き。2014年4月の消費税引き上げが決まっていたことで、2013年第4四半期から、住宅や自動車、大型家電などの耐久消費財の販売は劇的に伸びた。集中的な消費の高まりは経済成長率を高め、2014年第1四半期の実質GDPを5.8%の高い水準に押し上げた。
日本の輸出は2013年度わずかに増加したが、11兆4千億円と巨額の貿易赤字を計上した。2013年度の経済成長率2.1%のうち、外需(純輸出)は0.5ポイントの押し下げ要因となった。つまり外需によって経済を引っ張ろうとする安倍政権の計画は達成されていない。
全体として見ると、日本経済の短期的な景気上昇は、公共投資の拡大と消費税引き上げ前の駆け込み需要によってもたらされたものと考えられる。日本経済は依然として、自律的な回復軌道に乗ったとは言えない。(張季風 中国社会科学院日本研究所研究員・博士課程の指導教官 )
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年1月21日