シンボルの濃い眉の村山富市氏。本人を前にしても、すでに91歳とはとても信じられない。思考の筋道もクリアで、取材前に質問内容の提示を求めることもなく、聞かれた質問にはすぐに答える。よく響く声で、話すのも速く、補聴器も要らない。中国日報が伝えた。
村山氏が中国行きを考えているのに驚きはなかった。日本共同通信の報道によると、村山氏は中国駐日大使の程永華の電話を受け、北京で9月に行われる抗日戦争勝利70周年の記念活動に中国政府が元首相の村山氏を招待しようとしていることを知った。
「最終的に行くか行かないかはまだ決めていない。交渉状況と体の状態次第」。故郷大分県大分市の社民党支部で中国日報の単独インタビューを受けた村山氏はそう語った。
第二次世界大戦終結50周年の1995年、当時の村山首相は公式談話を出し、「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことを日本は反省しなければならないとし、日本の植民地支配と侵略の歴史について「痛切な反省の意」と「心からのお詫びの気持ち」を表明した。
「村山談話」として知られることとなったこの談話は、日本の正しい歴史認識と良識の模範となった。
村山氏は取材に対して、「日本がほかのアジアの国にお詫びをするのは当然だ。だがお詫びは目的ではない。より重要なのは、歴史を改めて振り返り、その再演を防ぐことだ」と語った。
「村山談話」によって日本の歴史問題はすでに解決されたはずだった。だが現職の安倍晋三首相は歴史問題を蒸し返そうとしている。日本の歴史教科書に「村山談話」は未掲載なので、談話で何が語られたかを知る人は少なかった。問題化することでその内容を知る人が増えたのは、安倍首相のおかげとも言える。
安倍政権は、過去に発表した談話の内容を繰り返す必要はない、つまり「お詫び」をもう一度盛り込む必要はないと主張している。安倍首相のこの態度について村山氏は、「安倍首相は本心を明確に語るべきだ。安倍首相は発言を変化させ続けており、本意がはっきりわからない」と指摘する。
村山氏は、歴史をいかに認識するかを真剣に議論し続けることは、日本にとっての大きな課題だと語る。歴史問題についてのドイツの態度と作法を村山氏は評価する。「ドイツの指導者はかつて、歴史を無視する人は前進できないと語った。この言葉には歴史の重みと重要性が示されている。私が強調したいのは、歴史を繰り返してはならないということだ」。すべての日本人が村山氏のように考えているわけではない。侵略と殖民を行ったのは日本だけでなく、欧州も多くの侵略と殖民を行ったのであり、アジアの国で日本が行ったのはアジアを防衛・解放する戦争だったという人もいる。「そういう見方をしている人も多いが、これは誤りだと考えている」
安倍首相は今年、インドネシアのバンドン会議と米議会での演説で、「お詫び」や「日本の植民地支配と侵略」という「村山談話」の最重要キーワードを避け、「痛切な反省」という言葉を用いるにとどめた。
米国の日本問題専門家や歴史学者を中心とした187人の研究者は5日、「日本の歴史学者を支持する声明」を連名で発表し、歴史解釈の問題は日本が世界から祝福を受ける障害となっていると指摘し、全体的で偏見なき清算をこの時代の成果として残すべきだと日本に呼びかけた。
署名者には、ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授やエズラ・ヴォーゲル名誉教授、マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー名誉教授、英国の研究者ロナルド・ドーアら、世界的に著名な研究者も名を連ねた。声明は、今年は「過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会」であるとし、この機会を逃すことのないよう日本政府に促している。