アジア太平洋地域で今後、どのような安全局面が形成され、どのような力が働くことになるのかは、世界の大国とアジア太平洋地域の国々の関心を集めている。筆者はこれについて、アジア太平洋の安全局面は各国の協力の下で形成されなければならないと考えている。(文:韓旭東・国防大学教授)
アジア太平洋の安全局面の構築において重要な役割を果たすのは、アジア太平洋の国々である。世界の経済的重心がアジア太平洋地域に移る中、米国の世界覇権戦略の重心もアジア太平洋地域へと調整され、アジア太平洋地域の安全情勢は複雑さを増している。各国の安全は冷戦後、世界的な安全情勢の影響を受けるだけでなく、地域の安全情勢の影響をより強く受けるようになりつつある。アジア太平洋の国々は今後、地域の安全をより重視していくものと見られる。
グローバル化という大きな流れの下、各国の世界進出の前提となっているのが「地域化」である。各国は所在地域の安全局面をより重視し、覇権国による覇権国のための安全局面をただ受け入れるという冷戦時のあり方はすでに過去のものとなりつつある。このことは同様に、アジア太平洋の国々が地域の安全局面構築に積極的に参加する内的な動力となっている。アジア太平洋の安全を同地域の国々が握ることは、歴史発展の趨勢と言える。
アジア太平洋の安全局面の構築を米国が主導することはできない。だがアジア太平洋の安全局面の形成は、米国の参加なしにも考えられない。一方で、米国とその他の大国との相対的な実力差が縮まる中、米国は、自ら構築したアジア太平洋の安全局面をその他の大国に受け入れさせることはできなくなっている。もう一方で、米国は依然として世界唯一の超大国であり、その影響力はほかの大国をはるかにしのいでいる。とりわけ米国のアジア太平洋地域における軍事的な影響力は、ほかの大国とは比較にならないほど大きい。米国は、アジア太平洋地域における強大な軍事プレゼンスによって、アジア太平洋地域の安全局面の構築に今後も重要な影響を与え続けることとなる。そのため地域の安全に対する米国の影響力を無視して、アジア太平洋の国家が地域の安全局面を自ら構築することは困難で、それが成功する見込みも低いと言わざるを得ない。