アベノミクスは真新しいものではなく、単なる金融緩和策と関連政策が合わさったものである。政府による刺激を受け、大量に通貨を発行したことは過去20年間で日本最大の間違いである。経済状況が悪い国では、通貨の大量発行は悪性インフレを引き起こす。経済状況がよい国で大量に通貨を発行すれば、富を増やすどころか資源配分が乱れ、内部危機を引き起こすことになる。通貨量が多い先進国である日本では、通貨の大量発行による物価上昇の効果が薄く、重大な問題を引き起こした。アベノミクスを主導する日本政府は物価下落を恐れ、消費を奨励し、それにより民間貯蓄は減り、負債比率は世界最悪の水準を維持している。
大企業はインフレによるメリットを受けるが、小企業のチャンスは減る。年功序列制の日本企業で、若手社員の昇進が難しく人件費が高いことは、労働法に保護されていることとインフレ政策が関係している。したがって、日本人は全力で仕事をしなければ生活水準が低下するおそれがある。しかし、残念なことに、物価上昇が著しくないため、「デフレ恐怖症」にかかった政府は量的緩和策の推進を必死で行う。
深刻な高齢化問題を抱える日本は出生率が低く、人口が減少している。これは日本経済の最大の問題と思われるが、インフレとの関係に目を向ける人は少ない。日本国民、特に高齢者の福祉は充実している。そのため、経済成長が鈍化し、若者は生計を立てるのに必死で子供を生みたがらない。経済状況の変化の要因は多く、その影響をデータで見ることはできないが、筋は通っている。人口は経済成長の重要な資源であり、生育は経済成長のための資本の蓄積手段である。しかし、この分野において、最も基本中の基本がインフレによって壊された。
1990年代末から現在にいたるまで、欧米諸国と中国は情報革命を起こし、それによる経済成長を経験してきた。若者の知恵が豊富なアメリカ、中国とインドはその革命を牛耳っている。それに対し、賢い日本人はこのチャンスを逃し、失敗した。日本のネット業界にグローバル企業がなく、発展のレベルが韓国に及ばないのは、若者が減少し、大きな負担を背負っていることが一因である。現在の人口状況を通して今後の経済成長がわかるように、低出生率の日本はまだ泥沼から抜け出せていない。
インフレが経済成長に及ぼす悪影響は短期的でも長期的でもある。その理屈は多くの経済専門家に解明されている。フリードリヒ・ハイエク氏は、インフレ発生の唯一の理由は通貨の大量発行にあると考えた。そのほかに、オーストリア学派の専門家もインフレの悪影響について解説した。それにもかかわらず、日本政府をはじめとする多国の政府が「デフレ脱却」に専念しインフレだけを追い求めていることには、嘆くしかない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年9月14日