文=坂本 めぐみ氏
【改めて実感し始めた民間交流の重要さ】
ここ数年、筆者と同じく中国滞在経験のある人たちと話す機会が増えた。年々低下する中国への親近感を残念に思い、中日間のことを話すときに皆が必ず同じ意見になるのが、民間交流、いわゆる草の根交流が重要だということだ。様々な要因があり、国単位では何かと難しい外交も、民間単位の交流は、はるか昔から行われてきており、今も継続的に親交を深めている人たちがいるのも事実で、むしろこの民間交流を通して育まれてきた相手国への感情は、ブレない強さや結びつきを感じるからである。それと同時に、旅行であれ留学であれ、個人が相手の国を訪れて実際にその国の空気を体感することが、お互いへの理解の一歩だと強く感じるからである。
【実際に体感することが重要な現地の空気】
同じような容姿で、同じように箸や漢字を使う文化とはいえ、筆者も中国に滞在してみて初めて知ることも多かった。中国で暮らし始めた頃、人々の話す声の大きさにまず圧倒されたが、実際に生活するなかで日本以上に街のノイズが大きいことを感じ、その環境で暮らす人々が自然と声が大きくなることにもうなずけた。また、発音が比較的平坦で、やわらかい音が多い日本語と違い、抑揚がハッキリし、破裂音も多い中国語の発音の特徴もあってか、声がより大きくきこえるのだ。決して怒っているのでもなく、威嚇しているのでもなく、自然とそうなることに初めて気づいた。小さなことではあるが、こういった気づきがあったからこそ、相手のことを誤解したりせず、理解できる感覚、知ろうとする感覚が生まれたように感じる。現地の空気や習慣などは、実際に接しないとわからない。一方的に流れてくるニュースだけでは決して感じとれない感覚なのではないかと思う。昔、二つの国の間で悲しい歴史があったのも事実だが、お互いのことを知らないという悲劇が小さな誤解をよび、大きな争いになっていったのではないかと感じるのである。