【キーポイントは自分がかかわること ~小さな音楽交流から得た経験~】
すでに様々な草の根交流が行われているが、これから重要となるのは“自分が関わる”というスタンスではないだろうか。誰かが体験した内容をテレビなどで見て相手の国を判断するのではなく、これからは自分が関わることで、より相手の国に対する生きた感情を持っていくのが必要になってくると思う。実際に自分が関わったことほど記憶に残り、思い入れも強くなるのではないだろうか。筆者も中国語を勉強するきっかけになったのが、中国の子供たちとの交流からであった。小さな地方都市同士の音楽交流で、小学生の女の子にマンツーマンで楽器を教えた経験がある。言葉も通じない環境の中、大人も子供も“相手を知ろう”とする気持ちが強く、想像以上に子供たちとのつながりが生まれた交流であった。そのとき「言葉が通じたらもっと色々と教えてあげられるのに」、「子供たちの話していることが理解できれば」という気持ちが、筆者が中国語を学ぶきっかけとなったのである。その初交流から10年後、筆者が中国へ留学し、思い出の地を再訪したとき、大学生となった彼女だけではなく、一度も会ったことがない彼女の家族も駅まで出迎えにきてくれた。10年前、会話もままならず、想像で漢字を並べて筆談した彼女と会話をし、一般家庭の習慣を肌で感じることができた当時の経験は、今でも忘れられない思い出である。現在も彼女との交流が続いているほか、中国で働きながら得た、かけがえのない友人との新たな思い出も増え続けている。
【10年先を見据えた“一期一繋(いちごいっけい)”の交流を】
“一期一繋(いちごいっけい)”とは、筆者が勝手に作った造語だが、今までの両国間の交流が、一生に一度の出会いや一瞬の出会いを大切にするという意味の一期一会のようなものだとしたら、これからは一生つながっていくという意味を並べた“一期一繋”のような交流を続けていくのがキーポイントになるであろう。一度きりの旅行や留学、出張などに終わらず、次の10年へつながるアクションを起こしていかなければならないのではないか。そして、そのアクションに大きな力となるのが、日本や中国への滞在経験者たちである。彼らが自分たち国で交流のきっかけを発信していく重要なキーマンになるであろうし、実際に彼らが話す現地事情は、人々の興味につながるのではないだろうか。ささいなことでも人から人へとつながり、これから一人でも多くの人に10年先を見据えた交流のきっかけが増えていくことを期待している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年9月30日