2004年11月に中韓自由貿易区の民間のフィジビリティスタディが始まり、2015年11月に韓国の国会が中韓自由貿易協定(FTA)を批准し、11年に及ぶ計14回の中韓FTA交渉が夢から現実となった。中国と他国のFTAと異なり、中韓自由貿易区の建設は中国経済の開放的な姿勢、地域内の制度を巡る駆け引き、東アジアの地政学に対してかつてない影響を及ぼす。
中国は14の国・地域とFTAを締結している。うち6カ国が先進国であり、韓国は中国と最も密接な経済・貿易関係を持つ。中国と先進国の産業競争の特徴として、中国は低・中水準の技術という産業の強みを持ち、先進国は中・高水準の技術という産業の強みを持つ。ゆえに中韓FTAは中国の設備製造業、特に機械・自動車・電子機器などハイテク分野の発展に対して重大な課題を突きつける。
中国周辺地域・世界範囲内で、二国間主義・地域主義が流行している。中国は中日韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の検討を進めている。米国主導のTPPは基本的に合意に達している。中韓FTAは東アジア全体の協力の流れに影響を及ぼす。
まず中韓FTAは東アジアに対して、「TPP以外にも地域協力には多くの余地が残されている」という情報を伝えた。異なる原因により、中国と韓国は東アジアの重要な経済体であるにも関わらず、TPPに加入していない。しかしこれは、中韓がより高水準の自由貿易区を設置する妨げにはならない。これは中韓FTAがRCEPの交渉を加速し、FTAAPの推進において中韓の発言権を高めることを意味する。