また中韓FTAは日本にプレッシャーを形成し、中日韓自由貿易区の交渉を促す。3カ国は世界経済で重要な位置を占めているため、中日韓自由貿易区が形成されれば、世界の経済・貿易の流れを変え、TPPに比肩する重要な地域貿易枠組みとなる。しかし米国の日本への影響、中日関係、日本の経済規模を考えると、中日韓FTAが短期的に形成されると楽観することはできない。
中韓FTAの交渉成功には、より深いレベルの地政学的背景がある。米国、日本、韓国という重要な関連国のうち、米国は中国と西太平洋で戦略的競争を抱えており、日本は中国との間に深刻な領土係争を抱えている。
韓国は朝鮮半島の特殊な歴史的背景により、米国との軍事同盟を強化することで自国の軍事安全を保障しなければならない。その一方で、中国との経済協力の積極性を維持することで、朝鮮半島における戦略的圧力を弱めることができる。
上述した客観的な環境と戦略の需要により、韓国は特定状況下、中国の協力の対象になりやすい。FTAを通じ中国と経済的に結びつき、軍事同盟により安全面で米国と結びつくことで、韓国は北東アジアにおける戦略的地位を高めることができる。(筆者:秦昇 中国社会科学院アジア太平洋・世界戦略研究院研究員補佐)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年12月4日