「中国では工場の一線で働く作業者の社会的地位が低い」
技術職人の育成について、今本さんは、「日本と中国の技術職人はやる気や態度の面で異なる。日本の職人は、生き生きとしていて、プロ意識がある。そのため、どんな仕事も喜んでし、勉強を通して、技術を自分のものにしてしまう。一方、中国の職人は、単なる『仕事』と見なしている」と指摘する。
そして、「日本では、新人職人と、ベテラン職人の唯一の違いは、服がきれいか汚いか。工場で働き始めたばかりの新人は、経験がなくても、一生懸命仕事をするため、汚れることなど気にせず、手も服もとても汚くなる。一方、ベテランになると、経験があるため、一生懸命仕事をしても、手は汚れても、服は汚れない」と笑顔で説明する。
今本さんは、「このような差が出るのは、中国社会の企業の一線で働く作業者に対する見方と大きな関係があるだろう」と指摘する。
「中国社会では、工場の一線で働く作業者は、オフィスで働くホワイトカラーより劣っていると見られている。しかし、日本では、どちらに対する見方も同じで、前者のほうが敬意を持って見られることさえある。工場で製造している商品は、労働者が作ったもの。生産関連の労働者は、敬意を持って見られるべき。学歴イコール能力では決してない。大切なのはやる気があるかどうか」。