戦後70年以上が経過し、旧ソ連と日本がモスクワで共同宣言を発表してからもすでに60年が経過する。しかしロシアと日本は未だに、平和条約を締結していない。数十年に渡り両国関係の正常な発展を妨げてきた領土問題は、ロ日双方の越えることのできない溝となっている。
これはロ日が係争中の南クリル諸島(日本名・北方四島)問題を巡る立場に大きな差があり、この根本的な食い違いを解消することがほぼ不可能なためだ。
日本にとって、北方四島問題は平和条約問題と同等であり、領土問題を解決しなければ平和条約の交渉はできない。北方四島の帰属問題を明確にしなければ、平和条約を締結できないというのだ。しかしロシアは、平和条約締結と領土問題の解決は完全に別問題であり、切り離すべきだと考えている。ロシアの南クリル諸島の領有には法的根拠があり、日本は第二次大戦の結果を直視しなければならないというのだ。
安倍首相の訪ロの可能性がメディアに伝えられてからまもなく、ロシアのショイグ国防相は、ロ日の係争中の島に、ロシア太平洋艦隊を配備する軍事基地を設立すると発表した。実効支配する南クリル諸島を利用し、日本をけん制しようとするロシアの戦略的意図が自ずと示されている。
安倍首相は今回、訪ロを思い切って決断したと言える。日本メディアの報道によると、米国のオバマ大統領は今年2月、安倍首相に訪ロ計画を見送るよう促していた。オバマ大統領は当時、米ロ間にはウクライナやシリアなどの問題で依然として深刻な食い違いがあり、安倍首相が西側陣営の首脳として訪ロするのは「時宜にかなわない」ともっともな理由を口にしていた。
「大洋の対岸の友人」から忠告を受ける一方で、領土問題解決を急ぐ安倍首相は、日本国内からの圧力も受けた。ロシア紙のウェブサイトは、「2年後に任期満了を迎える安倍首相はかつて日本の有権者に対して、任期内にロ日の領土問題で『実質的な進展』を実現すると誓いを立てた。しかし現在も問題は問題のままで、この厄介な問題を解決するため安倍首相に残された時間はあとわずかだ」と報じた。
遠路はるばるロシアを訪問する安倍首相は、遅々として進まない平和条約の交渉を進める意向を持つ。しかしロシア大統領府広報室が発表した情報によると、これは安倍首相の独りよがりに過ぎないかもしれない。
ロシア大統領府広報室は、プーチン大統領と安倍首相は両国の経済・貿易・文化交流および重要な国際問題について議論するとしたが、双方が領土問題について議論するかについては一言も言及しなかった。ペスコフ大統領府報道官は率直に、「ロシアは両国首脳会談後に、ロ日の領土問題の目に見えるような進展があるとは期待していない」と述べた。
プーチン大統領が重視している中心的な議題が、安倍首相と異なっていることが分かる。安倍首相は意気揚々に訪問し、意気消沈し帰国することになりそうだ。
当然ながら、安倍首相とプーチン大統領の会談は難航が予想されるが、ロシアは安倍首相の訪問を歓迎する。米国を始めとする西側諸国が厳しい対ロ制裁を行うなか、安倍首相の訪問は少なくとも、西側諸国が一枚岩でないことを証明する。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年5月6日