福島原発事故の発生からすでに5年が経過するが、真相は歯磨き粉のように小出しにされている。
東京電力の責任者は30日の記者会見で、福島第一原発の放射能漏れについて、「炉心損傷」と説明していたが、これは事実隠蔽だったと認めた。実際にはより深刻な「メルトダウン」が発生していた。東電の原子力部門のトップが事実隠蔽を認めたのは、これが初めてだ。
原発事故発生日より、日本側の情報公開が遅れ、情報に不備があり、さらには前後矛盾するといったケースが多発していた。例えば事故発生後、放射性ヨウ素によって汚染された水を妊婦や児童が飲用した場合の影響について、日本当局が発表した情報はバラバラで、日本産婦人科医会と日本医学放射線学会が発表したデータが相矛盾していた。
岡山大学の津田敏秀教授らは、2015年に世界的な医学誌『Epidemiology』に掲載した論文の中で、福島原発事故により大量の放射性物質が漏洩したことの影響により、福島県内の児童の甲状腺がん罹患率が、日本全国平均の20−50倍に上昇したと指摘した。津田教授は記者に対して、「福島県と政府は、放射線と児童の甲状腺がんの多発の関連性を認めていない」と述べた。
国際原子力機関の報告書によると、データ不足などの原因により、福島原発事故の周辺住民の健康および環境に対する、潜在的な悪影響を正確に把握することは現在も出来ないという。日本政府からの情報は、「原発事故の影響は限定的」「善後処置が順調に進められている」ばかりだ。
事実はいったいどうなっているのだろうか?新華社記者は各国の権威ある専門家を取材した。米ウッズホール海洋研究所のケン・ブェッセラー氏は、漏えいした放射性物質の8割が海に流入したため、福島原発事故の海洋への影響はかつてないほどだと指摘した。
東京海洋大学副学長で、日本海洋学会の副会長も務める神田穰太教授は、海洋の放射性物質のモニタリングマップを見せてくれた。そにれよると現在、太平洋西側の海域のセシウムより、東側のほうが多くなっている。つまり、海の流れに乗り、セシウムは既に米国西海岸にまで達していることになる。
さらに多くの関連する研究によると、これらの放射能汚染は海の魚類、生態系、食品安全に広く深い影響を及ぼすという。
本件のごまかしに関して、強い勢力を誇る日本の「原子力ムラ」の存在を無視できない。この特殊な「グループ内」では、産学官が「相互支援」を行っている。電力会社は政治家、大学、研究機関に賄賂を贈っている。原子力施設の安全基準を制定する委員の半数も、電力会社の息がかかっている。関連企業から賄賂を受け取っている大学教授は、国家基準よりもやさしい検査基準を設定する。
国のイメージ、食品安全、観光への影響、原子力政策、医療保障費の負担、公害訴訟など、日本政府が懸念すべきことは少なくない。しかし何よりも重要な命、人々の知る権利を前にして、これが日本当局が「臭いものには蓋」をする口実になるべきではない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年6月4日