中日両国の東南アジアにおける高速鉄道プロジェクトの競争が激化している。中国は2015年の公開入札で日本を圧倒し、インドネシアのジャカルタ―バンドン高速鉄道を受注した。だがシンガポール―マレーシア高速鉄道の入札開始前の今月6日、タイと日本がバンコク―チェンマイ高速鉄道の協力に関する覚書に調印したことで、日本が遅れを取り戻したと言える。
日本の現在の財政状況では、バンコク―チェンマイ高速鉄道プロジェクトを実行に移すのは困難だ。しかし何はともあれ、中国はタイとの鉄道協力で機先を制していたにも関わらず、実質的な進展を実現しておらず、さらには後発者の日本に追い抜かれる可能性が高くなっている。その原因については、熟慮する必要がある。
表面的に見ると、中国とタイの鉄道協力は進展が緩慢だ。これはまずタイ側の計画が変わりやすいからだ。インラック政権からプラユット政権になりプランが変わったことで、双方は多くの無駄な作業をしたことになる。次に総工費と金利の面で双方に食い違いがあり、合意に至らず、交渉が膠着状態に陥っている。
中国がタイとの鉄道協力で直面している根本的な問題は、日本のタイにおける念入りな取り組みを無視していた点にある。タイの鉄道は時代遅れで、更新を必要としている。しかしその発展方針は、日本の長年に渡る念入りな取り組みにより計画されていた。これは高速道路と格安航空により中・高所得層の移動と小口配送の問題を解決し、軌間1メートルのメーターゲージ鉄道の建設により大口商品の輸送と低所得層の移動の問題を解決するという方針だ。さらにこれを踏まえた上で「中南半島」とマレー半島を結ぶ準メーターゲージ鉄道網を建設し、中国大陸の標準軌鉄道網との差別化を図る。日本がタイとの高速鉄道協力に参与するのは、中国の戦術的な動きをけん制するためにすぎず、最終的に実行するかは二の次のことだ。
そこで日本はタイ運輸省によるメーターゲージ鉄道の建設を積極的に支持し、中古の車両を無料で提供したばかりか、タイを経由しラオス、カンボジア、ミャンマーにつながる東西経済回廊のメーターゲージ鉄道に円借款を提供することを約束した。また東南アジア最大の自動車生産国であるタイでは、日本が自動車産業を展開し、膨大な規模の既得権益集団を形成している。この既得権益集団は中国とタイが共同で行う長距離鉄道輸送の道路輸送面に代替効果を生む可能性があるため、不満は免れず、日本側に利用されやすい。
中国がインドネシアの高速鉄道プロジェクトで勝利を収めたのは、日本が長期的な取り組みによって形成した強みが活かされぬまま、短期間内に取引が完了したためと言える。高速鉄道プロジェクトは、中国の優遇策の攻勢を受け、実が熟し木から落ちる形となった。その一方で中国とタイの鉄道協力は長期的な駆け引きを展開しており、日本側の念入りな取り組みの強みが十分に発揮され、産学官の親日派の協力が形成された。中国とタイの鉄道協力の交渉を担当するタイ運輸省も、メーターゲージ鉄道の既得権益の影響を受け、非常に消極的な、いい加減にあしらうような態度を示している。中国が積極的に対応しなければ、中国とタイの鉄道協力プロジェクトは、プラユット政権の来年の「民政復帰」後にうやむやにされる可能性が高い。
喜ばしいことに、中国中鉄股份有限公司は8日、バングラデシュ鉄道局と首都ダッカで、パドマ橋の鉄道連結プロジェクト建設契約に正式に調印した。プロジェクトの契約金額は31億4000万ドルに及ぶという。中長期的に見ると、中国の高速鉄道の海外進出は大局を見据え、細かな点から着手する必要がある。対象国の発展戦略と結びつけ、すり合わせることで、需要のミスマッチを回避しなければならない。(筆者:周方冶 中国社会科学院アジア太平洋・世界戦略研究院副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年8月10日