安倍政権は国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊に対し、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の新任務を付与することを決定した。実施地域を首都ジュバ周辺に限定し、11月中旬にも閣議決定する方針だ。政府関係者が20日、共同通信に明らかにした。南スーダン情勢の混乱を受け、日本政府は本件の判断を見送っていた。
日本の安保法の施行により、PKOに参加する自衛隊は国連職員もしくは一般人を救助するため、武器を携帯できるようになった。これが「駆け付け警護」だ。同任務を遂行する自衛官は銃の携帯を認められ、必要な場合に警告射撃を行うことができる。日本社会では、これにより武装した人員が攻撃を受け、交戦に及ぶのではと懸念する声がある。
稲田朋美防衛大臣は今月7日に南スーダンを訪れ、現地でPKOに参加する陸自を視察した。稲田氏は帰国後、国会で「ジュバ市内は比較的安定している」と報告した。安倍晋三首相も「新任務の付与によりリスクが拡大するわけではない」と表明し、懸念を払拭しようとした。
稲田氏は今月23日、国内で新任務の訓練を展開する自衛隊を視察した。
安倍首相は安保法の施行を実践段階に断固推し進め、日本による「国際貢献」の点数を加えようとしているが、自衛官の安全に関する日本社会の懸念が払拭されていない。自民党内では「自衛官に何かあれば、安倍政権が崩壊する可能性がある」と指摘する声もある。
19日に自民党内で開かれた会議では、「南スーダン情勢は深刻」「慎重に議論し任務を付与すべき」などといった意見が相次いだ。出席した自民党の関係者は、「日本国民と自衛官の家族が懸念しており、南スーダンの正確な治安情報を提供するよう政府に求めている」と報告している。
南スーダンのPKOを取材したことのある東京新聞記者の半田磁氏は、稲田氏の視察を「大ざっぱすぎる」と批判した。
「稲田氏はジュバで7時間しか滞在しておらず、視察した場所は市内の安全エリアだけだ。安保分野の専門家は、戦乱地域を視察する際に細心の注意を払うべきだ。稲田大臣は現地で1泊か2泊し、自衛官と共に行動し、現地の安全情勢を確認すべきだった」
実際には稲田氏が南スーダンを視察した同日、ジュバ付近でトラックが攻撃される事件が起き、市民21人が死亡していた。南スーダンのキール大統領が率いる部隊は今年7月、前副大統領、元反政府勢力トップのリエック・マシャール氏を支持する部隊とジュバで交戦を続け、270人以上が死亡し、数万人が路頭に迷った。共同通信は陸自関係者の話として「政府軍を敵とする駆け付け警護は絶対に不可能だ」と伝えた。
自民党政権の元閣僚は共同通信の記者に対して「新任務の遂行でリスクは拡大しないとは、真っ赤な嘘だ。自衛官が武力衝突で死亡すれば、国民の政府批判ムードが高まる。これは安倍政権にとって受け入れられないことだ」と語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年10月24日