1970年代になると、老後の生活を有意義なものにしようと、再就職を希望する高齢者が増加した。1975年には東京で高齢者事業団が設立され、90年代に入ると「生涯学習整備法』が制定された。各都道府県が生涯学習の振興を謳い、厚生省は90年に高齢者の健康ライフを促進するモデルプロジェクトをスタートさせた。目標は、高齢者に自分の経験を十分に発揮し、充実した老後を過ごせる機会を提供することであった(娜拉教授)。
2000年以降、日本は深刻な高齢化に直面し、人口の構造に変化が生じた。その結果、人生100年時代という言葉が生まれた。すべての人が人生100年のライフプランを持ち、積極的に自分の人生設計をデザインすることを提唱したものだ。日本の高齢者は正式な大学など多くの学習機会に恵まれ、かつ健康的なレクリエーションを愉しむことができる。学習を通じて定年後も新たな仕事に就いたり、ボランティア活動に従事する人も少なくない。そうした心の豊かさを日本の高齢者は味わうことができる。
一方、中国の状況を見ると、高齢者向けの大学はすでに誕生しているものの、そのニーズの大きさからすると、十分に整っているとはいえない。ある統計によると、2015年末時点の中国の60歳以上の高齢者の数は2億2200万人と、総人口の16.1%を占めている。しかし高齢者向け教育のモデルは完全には確立されていない。
娜拉教授によれば、中国の高齢者向け教育ではマッチングが一番不足しているという。再就職が難しく、ボランティア活動の場もあまりない。「高齢者の生涯学習は、ある意味システムエンジニアリングだ。政策においては、学習場所が必要であり、教育人材の育成も不可欠。高齢者には自身の役割を発揮できる再就職の場を提供する必要がある。そのためには、政府のほか大学・非営利団体・企業・社会が力を合わせ、高齢者向けの継続教育のための持続可能な発展環境を作り出す必要がある」(娜拉教授)という。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月3日