南京に暮らす日本人 それぞれの模索(四)「小日本」と日本人

南京に暮らす日本人 それぞれの模索(四)「小日本」と日本人。

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発信時間: 2017-02-03 15:02:41 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

南京生活11年のある日本語教師の日本人によると、中国と日本の若者の間には、歴史と戦争という小さな川が流れているのだという。川を隔てていても言葉を交わし、話し合うことはできる。「だが無理に水に入れば、みんながびしょぬれになる」。

24歳の日本人留学生、野尻仁通は、川のこちら側からあちら側に声をかけようとしている一人だ。中国人の友人と政治や歴史について語ったことはない。「敏感な問題は安易に議論すべきではない」と思うからだ。

大学3年の時、南京大虐殺記念館を訪れた。最も印象深かったのは、記念館の黒い大理石の壁に中英日の3カ国語で刻まれた「犠牲者30万」の文字だ。

「3人でも30万人でも記念しなければならない」と野尻は言う。「一番大切なのは、同じようなことをこれから起こさないにはどうすればいいかということだ」

記念館から7キロの飲食店街「1912街区」で、野尻は日本料理店の店長も務めている。飲食店街の名は、中華民国元年の1912年が由来だ。南京はかつての中華民国の首都であり、この通りも、南京国民政府「総統府」の隣にある。

野尻は南京では、日本人と出歩くことはほとんどない。店の客のほとんどは中国人だ。野尻はそんな環境の中で、さまざまな中国人に知り会ってきた。病院長もいれば大学生もいるし、企業オーナーもいればコックもいる。

付き合っている女性も、日本語のレッスンがきっかけで出会った中国人女性だ。北京のオフィスに勤めていたが、野尻のために仕事をやめ、南京にやって来てサービス業に就いた。二人が働いているのは同じオーナーの料理店だ。

野尻はもう決心している。「彼女がその気なら、結婚するつもりだ」。

野尻はできるだけ、歴史の「小さな川」には足を踏み入れないようにしてきた。だがどうしても、水のしぶきが両足にまでかかってしまう時がある。

2012年9月10日午後、日本政府が閣議で、釣魚島及びその付属島嶼を「購入」し、「国有化」することを決定した。中国ではこれを受け、大小の反日デモが起こった。南京でも9月15日、邁皋橋付近でデモの群集が出現した。

翌日、野尻の働く日本料理店の前に、誰かが張り紙をした。「釣魚島は日本のものだ」と毛筆で書かれていた。誰かが通報し、警察が来た。野尻とオーナーは何度も、「こんなものを自分の店に張って騒ぎを起こす人はいない」と力説した。幸い、誤解は解けた。

野尻が通う中国ラーメン店がある。店内の高所にかけてあるテレビではしばしば、野尻の理解を絶した抗日ドラマが放送されている。見回すと、みんな麺を噛みながら、目だけ上に向けて、「かなり真面目に見ている」。

野尻は抗日ドラマが嫌いだ。中国人と日本人が殺し合っているドラマのおもしろさがわからない。日本にももちろん、第2次大戦を扱った戦争ドラマは多い。だがその中で日本軍の敵を演じているのは米国が多い。

ドラマを見ながら店員がひそひそ声で彼のことを話し、「小日本」と呼んでいるのが聞こえたこともあった。「『小日本』と『日本人』で意味がぜんぜん違うことがなぜわからないのか」と野尻は首をひねる。

ある日、帰宅のために歩いていたら、「小日本」という言葉が聞こえてきた。びっくりして立ち止まり、振り返ったが、そこにいたのは中国人の男の子が二人。楽しそうに追いかけっこしながら、後ろの子どもが何度も「小日本」と呼んでいる。二人は野尻のそばを駆けて行ってしまった。

野尻は中国では、日本メディアのニュースは見ない。だが中国のニュースを見始めると「3分以内」で必ず日本のニュースが見つかるという。

両国のメディアは違った様子を呈している。日本の報道では、中国人が喧嘩したり、ゴミをポイ捨てしたり、公共の秩序を守らないといった場面ばかりが強調される。中国メディアでは、日本について報道は、政治や歴史、経済などのマクロな話題がほとんどだ。

2016年12月13日も、野尻は1912街区のバーに入った。中国人の男性が英語で声をかけてきた。「Hi,where are you from(やあ、どこから来たの)?」 野尻仁通はためらわずに答えた。「I am from Japan(日本から来たんだ)」 男性もすぐに「Welcome to Nanjing(南京へようこそ)」と返した。

だが野尻も自分の身分を隠したくなる時がある。ある年の12月13日には、タクシーに乗って駅に友人を迎えに行った。ドライバーは彼のなまりを聞いて、すぐに聞いた。「どこから来たんだい?」 とっさに「韓国から来たんだ」と答えた。韓国人なまりまで真似した。

話をしたくなかったし、釈明したくもなかったからだ。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年2月5日

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