前出のベテラン観測筋によると、潜在成長率に対する供給側の影響という角度から見ると、日本は全要素生産性の面で、資源配置と革新という生産性向上の可能な分野で、いずれも厳しい問題に直面している。
国際取引所連合(WFE)の統計によると、2016年の世界の株式市場で時価総額トップ10の企業のうち、多くはIT企業で、米国からはアップルやグーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなどの大型IT企業がいずれもランクインし、中国からも2社(テンセントとアリババ)がランクインしたが、日本の企業は1社もなかった。状況は10年前とは異なる。当時のトップ10企業はエネルギー企業や銀行が中心で、日本の製造業の代表であるトヨタもランクインしていた。
1990年代後期には、日本でも大型IT企業が少なからず出現した。スマートフォンは最初は日本が開発したもので、写真も撮れ、Emailも使えるなど、多くの機能を備えていた。だが日本のIT企業は、国内の消費者の需要を満たし、サービスを提供することに研究開発の重点を置き、国際市場の需要と潮流を無視した。その結果、コストは高止まりし、国際競争力が足りず、世界的な影響力を持つIT企業を産出することができなかった。
長谷川克之氏によると、現在世界でトップクラスの時価にある企業の多くはいずれもここ2、30年で発展してきたもので、新たな経営モデルを持ち、新たなサービスを提供している。この意味では、日本にはまだ、絶えず革新を続け、経済に活力をもたらす企業を育てる土壤がない。
取材に応じた観測筋によると、日本は、良好な革新条件を備え、革新への投入も少なくないが、産出は芳しくなく、革新效率が低い。2016年のグローバル・イノベーション・インデックスでは、日本は、投入部門(制度、人的資本・研究、インフラ施設、市場洗練度、ビジネス洗練度)では9位だったが、産出部門(知識・技術の産出、創造的産出)は24位で、革新效率は各国・地域のうち65位だった。これと比べると、中国は投入部門では29位、産出部門では15位、革新效率は7位(韓国は24位、米国は25位)だった。
革新效率のもたらす結果として、2015年の世界の論文発表数のトップ20の国・地域のうち、中国は、米国に次いで世界2位につけ、日本は5位だった。2000年の日本企業の特許出願件数は中国を大きくリードしていたが、2016年になると、世界の特許出願件数トップ10の企業のうち、中国は3社がランクインし、中興通訊(ZTE)と華為(ファーウェイ)が1位と2位、京東方(BOE)が8位で、出願数は合計9488件にのぼり、そのうち中興は4123件を出願している。日本は一方、三菱電機とソニーの2社がそれぞれ4位と10位にランクインし、出願数は合計3718件だった。
彼らの見るところ、日本の革新效率が低いのは、マクロな要素だけが原因ではない。日本は多くの分野で技術を持っているが、ビジネスモデルの革新がうまくいかず、技術的な優位性が発揮できていない。シャープや東芝の最近の問題も、経営がまずかったのであり、技術が足りなかったわけではない。仮にこれらの企業が倒産したら、他社はそのエンジニアは欲しがるかもしれないが、経営者を欲しがることはないだろう。
長谷川克之氏によると、日本にとっては、規則や制度を緩和し、労働市場の流動性を高め、革新が順調に発展できる経済や教育の社会体制を構築することが、喫緊の課題となる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年9月7日