同作品はアニメの実写版というのは少し語弊がある。なぜなら、先に映画が製作され、後にアニメ化されたからだ。しかし、どのような表現スタイルであっても、ストーリーが展開されていく中で、特に、松田龍平が演じる主人公・馬締光也の心の成長の過程がしっかりと見る人に伝わって来る。馬締は、業績は平凡であるものの、真剣に仕事に没頭する編集者だった。また、対人コミュニケーション能力がもともと低く、自分の気持ちを他の人に伝えたり、他の人の気持ちを汲み取ったりするのが苦手だったものの、玄武書房辞書編集部に配属され、辞典の編集を行っていくうちに、それを克服する。その過程で、馬締は自分の人生の価値や夢を追及したり、自分に関心を示してくれる同僚や友人に心を開き始める。当初は下宿先の「早雲荘」の大家であるおばあさん・タケ以外は、トラさんという猫と、部屋を埋め尽くす自らの蔵書だけが「友達」だった。
そして、自分の殻を少しずつ破ると、周りの人も変化していく。軽薄でチャラい性格だが、とても社交的な同僚や、親切でやさしく、かつ粘り強く頑固な編集長、さらに、かわいくて優しいタケの孫娘など、みんなが辞典の編集の過程で様々な経験をする。そして、黙々と辞書作りに携わる仲間が少しずつ増え、狭い編集室で昼夜が逆転するほど残業し、辞典を完成するために、寝食の時間も削り、つまらないと見られていた「辞書作り」を少しずつ完成させる。
筆者は、この映画を見て、主人公や編集長、そして、辞書作りに励む一人ひとりが示す、一つのことに没頭し、目標を達成するために全身全霊を捧げるその精神に最も心を打たれた。タケが馬締に、「若いうちに一生の仕事を見つけて。それだけでみっちゃん幸せなんだから」と話すように、一つの事に没頭すると、自分の本当の人生の価値を見つけることができるものだ。
アニメが大好きな人は、同じく素晴らしい内容であるアニメ版「舟を編む」を見るといいだろう。また、世界最大の英語辞書「オックスフォード英語大辞典(OED)」の誕生秘話を描いた映画「The Professor and the Madman」も中国で公開される可能性が高い。同映画では、人間同士が許したり、助け合うドラマがストーリーに盛り込まれており、それを見ると自問自答する機会になるだろう。(編集KN)
「人民網日本語版」2017年9月15日