新鮮な姿勢
しかし安倍首相のこの姿勢の変化には、新鮮味がまったくないのだろうか。いや、そうではない。少なくとも次の2点で、新たな動きを見せている。まず、安倍政権の戦略には一種の活路、独立、バランスという考えが生まれている。最も大きな変化は、安倍首相は中国が推進する地域協力構想への加入を断固拒否し、一帯一路とアジアインフラ投資銀行に極力反対していたが、今や何度も積極的な姿勢を示すほどになったことだ。中短期的に、日本が米国を離れ中国に近づき、中国と米国の間で選択をすることはないが、日本の戦略的方針の禁区がすでに少しだけこじ開けられたと言える。
日本は政治・安全面で米国と協力し中国をけん制していたが、より賢明かつバランスの取れた「日米同盟+日中協調」に調整・転換している。NYタイムズは「これは中国がアジアで、米国が持たない力と影響力を発揮していることを、日本が認めたことを意味する」と伝えた。中国がさらに発展すれば、日本はいかに日米同盟を強化しようとも、中国との正面衝突を回避するため、中国との戦略的協調・交渉関係を維持しなければならなくなる。
次に、戦術・策略面で友好的な姿勢を示し歩み寄っているが、これには実際に需要が存在する。中短期的には、確かな需要でさえある。これは外交及び経済・内政という2つの原因がある。外交について、安倍首相は中国をけん制し包囲するため周辺諸国を歴訪し、説得に苦心しているが、目標を達成していない。「地球儀を俯瞰する外交」は失敗が宣告された。この状況下、中国をあくまでも敵対視すれば、日本全体の利益が損なわれ、虻蜂取らずになる。経済について、アベノミクスの景気回復効果は依然として限定的であり、新TPPは合意に至ったが効果が出るには時間がかかる。その一方で中国の一帯一路は着実に発展しており、日本の経済界はチャンスを逃すことを恐れている。
この状況下、日本経済界さらには政界の一部の関係者は、対中政策の方針を変えるよう安倍政権に呼びかけ続けている。安倍首相が一定の調整をすることは必然的だ。景気回復が実現できなければ、すでに異例とも言える長期政権運営をしている安倍首相は、国民を納得させられないだろう。