安倍政権は昨年より、対中関係改善の願いを示し続けている。「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)の参加に意欲を示し、中日首脳会談の開催を提案し、李克強総理を日本に招待するなど、どれもが心がこもっているようだ。李総理は、今年上半期の中日韓首脳会談を契機に、正式に訪日することを前向きに検討すると述べた。今年も春が訪れ、中日関係も「小春日和」を迎えている。(筆者・呉懐中 中国社会科学院日本研究所研究員)
安倍氏の「真心」、過大視は禁物
それでは、これで安倍首相が戦略方針を変え、「真心」を持ち中国との友好とウィンウィンを求めていると判断できるのだろうか。少なくとも現時点では、これを過大視できない。中・短期的に、安倍首相が対中政策の基本方針や立脚点を、根本的に調整することはない。米国がオバマ政権や共和党の方針に沿いアジア太平洋でリバランスやTPPを続けていたならば、中国の一帯一路の成果とビジョンがなければ、中国が南中国海の安定を維持できず域外国が波を立てることができれば、日本が朝鮮の核問題で中国の力を借りる必要がなければ、安倍首相はこれほど切実に中国との友好を求めはしないはずだ。
中国の台頭を直視できず、日本政府は中国をけん制・警戒するため頭を絞っている。しかし現実的には、これほど大規模かつ大きな利益を持つ中国との付き合いを回避できない。これは安倍首相を最も困らせていることだ。この心理と認識に駆られ、安倍首相は中国と近すぎず遠すぎず、平和的に共存する疎遠な関係を維持しようとしている。利益を求め損失を避け、政治と経済を切り離す方針を貫く。こうして、中国に対して裏表のある姿勢を示しがちになる。
そこで安倍首相は中国に対する戦略的目標を、次の3つに絞った。つまり、経済面ではチャンスをつかみ、安全面では「脅威」に備え、政治面では影響力を競うということだ。特に軍備を拡張し、日米同盟を強化し、「友達の輪」を広げるという中国警戒のあわせ技により、中日関係を妨害し損ねている。最近の例を見ると、日本は「インド太平洋戦略」により中国をけん制し、影響を和らげようとしている。