結婚せず、子どもをもたず、家を買わない。これは日本の多くの若者の現状だ。そして実際のところ、こうした現象をもたらした原因はただ一つ、「貧しさ」にあるといえる。低欲望は欲望がないということを意味するのではなく、「平成の大不況」の時代に大人になった若者の多くが、とりあえずその日を無事過ごせればいいと考えており、消費生活が至ってシンプルであることを言っている。これは無印良品やユニクロなどにあれほど人気が集まる理由の一つでもある。
日本のインフレ率は長らく1%以下が続いており、18年になってやや好転した。データをみると、18年3月はなんとか1.5%に達したが、安倍晋三首相と日本銀行(中央銀行)の通年目標である2%にはまだ遠い。
今の状況はそれほど悪くないし、未来がそれほど好転するとは思えないので、これ以上努力する必要はない。低欲望のこの「悟りきった」ような心境は、経済にとっては何のメリットもない。わかりやすくいえば、低欲望とは人々が消費に熱中しないことであり、消費は減少し、企業の利益も減少し、ひいては企業のリストラにもつながり、個人消費はさらに減少する。こうした悪循環が絶えず起きかねない状況の中で、経済の復興はますます困難になっていく。
低欲望社会では、高額の消費によってニーズを満たすことはできないため、安い価格の代替品を探してニーズを満たすしかない。いわゆる不況の時は口紅が売れる「リップスティック効果」というやつだ。経済が不況になると、収入が低下し、住宅購入、自動車購入、旅行といった高額の消費は望めなくなる。だが手元にはいくらか余裕があるので、要りもしない安いモノを買って心を慰める。経済の低迷は、低欲望社会と高齢化社会が生じる原因であり、また低欲望社会と高齢化社会がもたらす必然的な結果なのだ。